2010年08月26日

鹿野司氏がホメオパシーを擁護

 先月(9月号)の『SFマガジン』の連載「サはサイエンスのサ」の中で、サイエンス・ライターの鹿野司氏がホメオパシーを擁護していた。
 いや、ストレートに「ホメオパシーは正しい」と言ってはいないんだけど、そんなもん信じたってたいした害はないし、信じるのは個人の自由だ、みたいな論法なんである。
 鹿野氏は昨年起きた、ホメオパシーを信じる助産師によってビタミンKを与えられなかった子供が死亡した事件について、「二十年に一回しか起きないようなできごとなわけね」と言ってのける。

> そういう意味では、ホメオパスでやんすの人たちにとって、この死亡事例はまことに確率的に不幸なできごとだった。

 このくだりにはムカムカきた。
「不幸」なのは死んだ赤ちゃんとその母親だろう!?
 なぜ「二十年に一回しか起きないようなできごと」なのか。鹿野氏の論法を要約するとこうである。

・日本の年間の出生数は110万人。
・助産院を利用する人は1%
・助産院でビタミンKを投与しないケースが1%
・ビタミンKが投与されなかった場合にビタミンK欠乏症で死亡する確率は1/2000

 110万×0.01×0.01×1/2000≒1/20

 ちょっと待った。「ビタミンK投与をしないケースが一%」というのは、どういう根拠で言っているのか。今回の事件で明るみになったのは、助産師の世界にホメオパシー信仰がかなり浸透しているらしい、という事実だ。

助産師会とホメオパシーとの濃密な関係
http://putorius.mydns.jp/wordpress/?p=716
ホメオパシー問題について
http://midwifewada.seesaa.net/article/159141957.html

 どうもホメオパシーを信じる助産師や赤ん坊にビタミンKを投与しない助産院は、けっこう多いらしいのだ。そのパーセンテージは不明であるが、仮に20%だとしたら、毎年1回、死亡事例が発生することになってしまうのだが。
 それに、今回発覚したビタミンKレメディの件は氷山の一角で、まだ他にどんなレメディが処方されているか(=正しい薬が処方されていないか)見当もつかない。もちろん、犠牲者は赤ん坊だけとは限らない。だから鹿野氏のこの計算はまったく意味がないのである。
 実際、東京では今年5月、病院に行かずにホメオパシーに頼っていた女性が悪性リンパ腫で死亡するという事件が起きている。

代替療法ホメオパシー利用者、複数死亡例 通常医療拒む
http://www.asahi.com/health/news/TKY201008100476.html?ref=recc
ホメオパシー被害「あかつき」問題を憂慮する会
http://www012.upp.so-net.ne.jp/mackboxy/Health/

 死亡には至っていないが、怖い事例は他にもいろいろある。

アナフィラキシーショックをホメオパシーで治した!スゴイでしょ!
http://d.hatena.ne.jp/NATROM/20100819

 夫がアナフィラキシー・ショックを起こしてるのに、砂糖玉を舐めさせて、ワカメとドクダミとよもぎとビワの葉を入れた風呂に入れ、息子を剣道の練習に送っていった奥さん。あまりの危機感のなさに冷や汗が出る。
 これ、外出してる間にご主人が風呂の中で死んでいてもおかしくない状況だ。助かったのは幸運だろう。
 さらに恐ろしいのは、親がホメオパシーを信じてしまったために、子供がまともな医療を受けさせてもらえない事例が多いことだ。

医療ネグレクトと思われる例があるということで通報した
http://d.hatena.ne.jp/lets_skeptic/20100715/p1

 幸い、大事には至っていなかったらしいが、これも恐ろしい話である。

ホメオパシーで、てんかんを治している子はどうなっているのか。
http://ameblo.jp/moonsun3/entry-10528060180.html

 ホメオパシーに切り替えたために、かえっててんかんの発作が増えたという。これも子供がかわいそうだ。

5歳の娘が線香花火の火の玉を60センチぐらいの高さから素足の足の甲に落としてしまい、皮膚に5mmぐらいの焦げ後がつく火傷をしてしまいました。
http://www.rah-uk.com/case/wforum.cgi?no=3405&reno=no&oya=3405&mode=msgview&page=0
>熱には熱ですが、火傷には、40度のぬるま湯よりも、蒸気をあてる方が本当は効果的です(そのときは痛いですが、少しの我慢です)。

 火傷した子供に蒸気を当てろって……正気か!?

 被害者が自分の意思でホメオパシーを選択したならまだしも、選択の余地のない子供たちが結果的に虐待を受けているのだ。
 こうしたことを知ってもなお、鹿野氏はホメオパシーを擁護するのだろうか?

 ようやく日本学術会議や日本医師会もこの問題を取り上げはじめた。

医療敬遠に危機感 学術会議、ホメオパシー否定
http://www.asahi.com/health/feature/homoeopathy_0825_01.html
http://www.asahi.com/health/feature/homoeopathy_0825_02.html

ホメオパシー 日本医師会・医学会、学術会議に賛同
http://www.asahi.com/health/news/TKY201008250328.html

 さらにホメオパシーはペットの世界にも広がっているらしい。「獣医 ホメオパシー」で検索すると、びっくりするほどたくさんヒットする。
 今日、マイミクさんの日記で知って驚いたブログ。

http://blogs.yahoo.co.jp/setsu_forum_k/24371932.html
>犬には今年から狂犬病の予防接種を控えています。水銀やホルムアルデヒドなどの有害な重金属を防腐剤で使っているので、犬のよだれの原因にもなっています。何よりも日本では狂犬病もないのですから、犬の体に負担をかけることはもうしたくないのです。

 愛犬に狂犬病の予防注射を受けさせてないって……それは狂犬病予防法第五条違反(20万円以下の罰金)なんですが。

狂犬病予防法
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S25/S25HO247.html

 こうした危険性があるからこそ、これ以上ホメオパシーを普及させないように警鐘が発せられているわけなのだが、鹿野氏はそこを理解していないのだろうか。
 菊池誠氏が「ホメオパシーのレメディに薬効がないのは自明」と言ったことに対する鹿野氏の批判はこうだ。

>(前略)自明という表現を使ってしまうと、それは「知恵のあるものが愚かなものを見下す」ニュアンスを強く漂わせる。同じ問題意識を共有する仲間内なら、こういう表現でもそうだよねそうだよねってみんな思うけど、身近にホメオパシーに傾倒している人がいたとして、その人に向かってこういう物言いをしたら、反発されるだけで、かえって受け入れてもらえないだろう。

 じゃあ何か? 知恵のある人が「これこれこういう理由でこれを信じるのは間違い」と説くこと自体がいかんと? それは科学リテラシーというものを根本的に否定した物言いではないか?
 無論、事実を聞かされて反発する人はいるだろうけど、それは反発する側の責任であって、道理を説く側の責任ではないはずだ。
 そもそも鹿野氏はどれぐらいホメオパシーについて知っているのだろうか。彼が「レメディの効果の原理はこんなかんじ」と解説している文章を読んでみよう。

> 標準療法の薬は利くかも知れないけれど、そのぶん自然治癒力を弱めてしまう。でも、薬を薄めてやれば、それを補うように自然治癒力が活発になるはず。薬をうんと薄めたもの=レメディを飲むことで、自然治癒力を最大限に引き出すことができるわけですよお客さん。
> おお~。なるほど~。それなら利きそうだよね(*v*)

 はい、もうお分かりですね。レメディは「薬をうんと薄めたもの」ではない。その逆で、病気の症状を惹き起こす物質を薄めたものなのだ。
 さらにその希釈率が問題である。たとえば30Cというレメディの場合、元の物質を水で100倍に薄めてよく振り、それをさらに100倍に薄めてよく振り、それにさらに100倍に薄めて……ということを30回繰り返す。濃度は元の物質の10の60乗分の1になる。つまり1000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000分の1である。これではもはや元の物質の分子は1個も残っていない。ただの水である。これを砂糖玉に染みこませたものがレメディなのだ。
 鹿野氏は何かとホメオパシーを漢方医学と比較したがる。だが、漢方では少なくとも薬効成分が体内に入る。ホメオパシーでは(砂糖と水以外)何も体内に入らない。これは決定的な違いだ。
 だから「レメディに薬効がないのは自明」と言い切ってしまっていいだろうし、実際、プラシーボ効果以上の効果がないことは証明されている。このへんのことはサイモン・シン&エツァート・エルンストの『代替医療のトリック』(新潮社)に詳しい。



 鹿野氏はこうも書いている。

> ホメオパシーについてはオレも深堀りしたいとは思わないけど、欧米では古くからある伝統医療だから、やっぱり漢方医学に匹敵する複雑で深淵っぽい説明原理の体系はあるのだろう。
(誤字は原文ママ)

 そう、鹿野氏はホメオパシーについて何も知らない! 知らないならウィキででもちょっと検索すればいいだけのことなのに、何も調べずに2ページの記事を書いちゃうのだ。
 これはサイエンス・ライターとしてアウトでしょ。
 さらに彼はこうも書く。

>(前略)お母さんもたぶん、お子さんが亡くなるまでは、良い体験をしていると感じていたんじゃないかな。

 母親に責任の一端があるかのような書き方をしているが、新聞報道によれば、ビタミンKレメディ投与は助産師が独断でやったことで、母親の同意は得ていなかったようだ。

> 人の心は弱いものなので、こういう特別さを求めがちであり、それは懐疑論者だってそうなんだよね。たとえば、いちはやくiPadを手に入れて見せびらかしたい気持ちと、水中出産とか特別な秘技のもとに我が子を産みたい気持ちは、本質的には同じものだ。汝ら、罪無き者から石を投げよ。

 要約すれば、「iPadを買って自慢している人間はホメオパシーを批判するな」ということだ。んなアホな(笑) そんなもん、比喩にも何にもなっていない。だいたい、iPadを買うことのどこが「罪」だ?
 iPadを買うことと、非科学的な信仰で赤ん坊を死なせることを、同列に論じられてはたまらない。

 いやね、ネットにちょくちょくいるんだよ。誰かが集中砲火を浴びていると、議論に割って入ってきて、「そんなにきつく言わなくても」とか擁護しはじめる人。でも、その問題について何も知らない。ただ、いじめられている人を見かけたから、反射的にかばいたくなっただけ。
 攻撃している側を揶揄することで、本人は問題を相対化している気になっちゃうんだろうけどね。せめてその問題について最低限の勉強してから発言してほしいと思うよ。

 この号だけでも十分にむかついたんだけど、よせばいいのに、今月号(10月号)の『SFマガジン』にその続きが載っていた。例によって、漢方とホメオパシーを並べて論じ、どっちも似たようなもんだからホメオパシーを悪く言うことない……というような論法。

> 西欧の伝統医療であるホメオパシーは、西欧では長い歴史があるので、標準医療にはかかるなとか無茶なことはたぶん言わない。それにホメオパシーで処方される薬も、全部が全部、超希釈された薬効成分のないものばかりではなくて、普通の煎じ薬みたいな、それなりの薬効のあるものも多いみたい。極端に酷いことがほとんど起きないような加減がわかっていて、それなりのベネフィットはあるから、伝統医療は続いているわけね。
(中略)
> それに対して、日本におけるホメオパシーは輸入品で、発生期の「教祖あり宗教」と同じく過激になりやすい。

 えー、あまりにも間違いだらけでどこからツッコんでいいやら(笑)。「伝統医療」「長い歴史」とか言ってるけど、ハーネマンがホメオパシーを創始したのは1810年で、まだ2世紀の歴史しかなく、漢方と並べるのは無理があると思う。海外でもホメオパシーに頼ったために死亡した事例があるのは、『ニセ科学を10倍楽しむ本』でも書いた通り。また、レメディ自体で「極端に酷いこと」なんか起きようもない。それはただの水を染みこませた砂糖玉なんだから。
 ホメオパスの中にはレメディ以外に「普通の煎じ薬みたいな、それなりの薬効のあるもの」を処方する者もいるのだろうか。いたとしても、それはすでにホメオパシーではない。別の代替医療だろう。鹿野氏はホメオパシーと代替医療全般をごちゃ混ぜにしているとしか思えない。
 あきれたことに、そのすぐ後には、こんなことも書いちゃってる。

> オレはホメオパシーのことはほとんど知らないけど、たぶん欧州においては、ホメオパスでやんす的な生きかたというのがあって、それは養生訓みたいな感じで、レメディですべて解決するわけではなくて、生活全体を見直していこうというようなものを含むのだろう。

 だから、「たぶん」なんて推測で書くな! 知らないんだったら調べてから書け!
 一般人がブログで書くならまだしも、これはサイエンス・ライターを名乗る者が雑誌に載せるような文章ではない。
 
 おまけ。
 ホメオパスのシャーリン・ワーナーという人の講演(字幕つき)。「隣人の犬が庭でウンチしたことに怒って爆弾で仕返し」とか、何のことやらさっぱり分からない。ほんとにソーカル事件みたいなパロディじゃないかと思えるほどのすさまじい内容で大笑い。
http://www.nicovideo.jp/watch/sm11517284

 これが鹿野氏が言うところの「漢方医学に匹敵する複雑で深淵っぽい説明原理の体系」である。

  
タグ :ニセ科学

Posted by 山本弘 at 18:03Comments(20)TrackBack(0)事件

2010年05月20日

これは天罰ではない!

 口蹄疫報道に関して、本当に政府によるマスコミへの情報規制の指示なんてもんがあったのかと、まだ疑っておられる方がおられるようだが……。
 赤松農林水産大臣自身が、さらっと認めちゃいました!(笑)


(2:28あたり)

赤松「あとは風評被害も大変心配してましたので、マスコミのみなさん方にもそれをお願いして、これについてはかつてのBSE(狂牛病)と比べていただければ分かりますが、非常に冷静に見ていただいておりまして、これはうまくいったと思うんですけども」

 やっぱりあんたが指示してたんかい!
 ちなみに、被害が激増していた時期に、10日も日本を離れ、メキシコ、キューバ、コロンビアに出かけていた件については、何ら緊急性はなかったことも判明。



 おそらく、ようやく会見の予定を取り付けたのに、こちらの事情でキャンセルしたら、カストロ氏の機嫌を損ねるかも……とか思っちゃったんだろうな。

 ようやくテレビでも新聞でも大きく報じはじめて、マスコミは正常化に近づいたか……と思ったんだけど、そうではないみたい。



 これはひどい偏向報道。予備知識なしにこのニュースを見た視聴者は、「国は対策をきちんとやってきた」「東国原知事は怒りっぽい奴」という印象を受けたに違いない。
 実際はどうだったかは、この前後のシーンを見れば分かる。連日、口蹄疫対策でへとへとになっているところに、南日本新聞の記者にあまりにもバカな質問をされたもんでキレちゃったのである。



 いやー、これは怒るわ。「検討しております」「まだ決断はしておりません」と現状を正直に述べているだけなのに、ぐだぐだとからんでこられたら、そりゃカチンとくるわ。
 そのうえ、怒っているシーンだけを編集して印象操作するんだからなー。

 どうも一部マスコミが、東国原バッシングをはじめているようなのだ。
 特にひどいと思ったのが、日刊ゲンダイの記事(知り合いがスキャンしたもの)。

口蹄疫大被害と疫病神知事
東国原浮かれ知事に天罰


 どこまで調子がいい男なんだ。これまで散々、民主党を批判してきた宮崎県の東国原知事が、「口蹄疫」の被害に見舞われ、鳩山政権に泣きついている。
 宮崎県を訪ねた平野官房長官に「関係者の無念は尋常じゃない」と訴え、鳩山首相あてに具体的な要望項目をズラズラと並べた「要望書」を手渡した。さすがに、宮崎牛のブランドを支える「種牛」49頭が殺処分されることになり、真っ青になっているらしい。
 残る種牛は、避難させているエース級の6頭だけ。もし、6頭が感染したら宮崎の畜産は終わりだ。
 鳩山首相は、予備費から1000億円規模を拠出することを決めた。
 しかし、家畜の伝染病対策は法律上、県の責任だ。エラソーに「地方分権」を言ってきたのだから、すぐに国に泣きつかず、自分で解決したらどうなんだ。
「そもそも、ここまで被害が広がった責任の一端は、知事にあります。公式には、最初の感染牛は4月20日に確認されたことに なっているが、すでに4月9日の時点で口蹄疫と疑われる牛が見つかり、獣医が家畜保健衛生所に鑑定を依頼していた。4月9日に対策を取っていたら、ここまで被害は広がらなかったはずです」(県政関係者)
 テレビ出演にうつつを抜かし、片手間で県政をやってきた東国原知事には「いつか重大なミスを犯すのではないか」と危惧する声が強かったが、とうとう宮崎県が破滅に向かいかねない事態が勃発である。
 県民からは「チャラチャラ浮かれてきた知事への天罰だ」なんて声も上がっている。


 地震や洪水などの災害が起きると、すぐに「天罰」という言葉を口にする奴が、どこの国にもいる。
 ハリケーン「カトリーナ」の時もいた。

http://tokyo.txt-nifty.com/fukublog/2005/09/post_9bd2.html
http://www.zakzak.co.jp/top/200903/t2009030416_all.html

 中国の四川大地震の時もうじゃうじゃいた。

http://komachan.naganoblog.jp/e108525.html
http://maglog.jp/nabesho/Article303495.html
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1316494303
http://warasoku.blog18.fc2.com/blog-entry-394.html

 新潟地震の時も。

http://warasoku.blog18.fc2.com/blog-entry-394.html
http://blog.goo.ne.jp/yoonjoon/e/70646bca675d3316598d6f1ce12f5078

 ハイチ地震の時も。

http://thk95532.progoo.com/bbs/thk95532_topic_pr_4556.html
http://www.unkar.org/read/tsushima.2ch.net/news/1263452494

 僕はこういうことを言う奴すべてを憎む。
 地震や洪水で死んだり家を失った人のほとんどは、まっとうに暮らしてきた一般市民である。
 口蹄疫で最も苦しんでいるのは、地道に牛やブタを育ててきた畜産農家の方々である。
 彼らが神に罰せられるようなどんな罪を犯したというのか。
 災害や疫病に「天罰」という言葉を安易に持ち出すのは、苦しんでいる無辜の人々を鞭打つ卑劣な行為であることを自覚してほしいものである。

  
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Posted by 山本弘 at 17:55Comments(15)TrackBack(1)事件

2010年05月17日

口蹄疫報道あれこれ

 数日前からようやくテレビでも取り上げるようになってきたけど、さて、各局は具体的にどんな報道をしていたか?
 百聞は一見にしかず。実物を見てみよう。こういう時にニコ動は便利ですな。
 削除される可能性が高いので、視聴はお早めに。

●フジテレビ『スーパーニュース』5月14日
http://www.nicovideo.jp/watch/sm10716265
 5月14日にもなって「緊急取材」と称する厚顔無恥ぶり。そんなもんは「緊急」でも何でもありません。
 レポーターの
この(現地の)不安の声というのがなぜここまで我々に届かなかったのかな
 という他人事みたいな発言(10:40あたり)には、「お前らのせいだろ!」というツッコミが多数(笑)。そう、現地の声を全国に届けることがマスコミの役目のはず。
 いちおう赤松大臣批判は出てくるものの、最後はコメンテーターが「これは政争の具にはしてほしくない」と擁護する発言。ほー、政府の責任を追及しちゃいかんと?
 でも、フジテレビはまだましな部類で……。

●TBS『サンデーモーニング』5月16日
http://www.nicovideo.jp/watch/sm10736625
 スタジオのコメンテーター全員、赤松大臣の「あ」の字すら口に出さない不自然さ。政府の責任を追及せずに、地球環境の問題とかに話をすり替える。

●NHK『NHKニュース7』5月16日
http://www.nicovideo.jp/watch/sm10742018
 やっぱり政府の責任についての言及はまったくなし。「当面の影響は小さい」と強調しておきながら「畜産への影響は大きい」って? このニュース原稿書いた人、何かおかしいって思わなかったの?
 平野官房長官の
この問題は水際で拡大させないということがいちばん大事ですから
 という発言にも噴いた。とっくに水際超えてるって! もう8万頭も処分対象になってるんだって!

●テレビ朝日『スーパーモーニング』5月17日
http://www.nicovideo.jp/watch/sm10749006
 にやにや笑いながら「結局みんな人間のご都合なんだろうね」などと語るコメンテーターが不快。
 やっぱり政府批判はやらない。

 こうして並べると、やっぱり「あまり政府を批判しないように」という指示が出てるとしか思えないんだけどねえ……。
 ちなみに、新聞・テレビだけじゃなく週刊誌も、この問題をほとんど取り上げていません。

 ついでに、こういうのも見ておいた方がいい。5月11日の国会答弁。

2010/5/11衆院農林水産委・江藤拓(自由民主党)口蹄疫災害について
http://www.nicovideo.jp/watch/sm10686926

 ほんと、キューバやコロンビアに何しに行ってたんですかねえ、赤松さん……。

【5月18日9時追記】
 5月17日、政府が(ようやく!)「口蹄疫対策本部」を設置。今朝(18日)の産経新聞はそれを一面で報じました。

 また、3面には赤松大臣を強く批判する記事も載りました。
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/100517/plc1005172301023-n1.htm

> 首相は今回、赤松広隆農水相がトップの同省対策本部では対応できない事態と判断し、自ら指揮を執る選択をした。背景には、被害拡大の中、現地からの悲鳴をよそに外遊や政治活動を優先した赤松氏への批判の高まりもあるとみられる。

> 赤松氏は4月20日に感染が確認されていたにもかかわらず、30日から9日間、中南米を訪問した。この間、殺処分対象の牛と豚は4369頭から一気に14倍以上の6万2426頭に跳ね上がった。しかし、5月8日に帰国した赤松氏が真っ先に向かったのは栃木県。民主党衆院議員の後援会会合出席のためだった。

> 赤松氏がやっと宮崎県を訪れたのは10日になってから。鳩山首相は「必要以上にさまざまな風評が立つと、農家の方が困る」と、対応の遅れを釈明したが、すでに感染は拡大しており、風評被害を気にする段階は過ぎていた。赤松氏は17日昼、首相との会談後も記者団に「対応が遅れたとは思っていない」と自己正当化を試みた。

 ようやくマスコミがまともな情報を流しはじめたな、という印象です。まあ、ネットでこれだけ騒がれちゃったらねえ……。

  
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Posted by 山本弘 at 17:16Comments(2)TrackBack(0)事件

2010年05月11日

SFみたいな事件が進行中

 SFもののドラマやマンガやアニメでよくあるのが、モンスターやゾンビが暴れてたり、怪現象が続発しているにもかかわらず、政府が報道を規制し、マスコミも何も報じないため、一般市民の大多数が真相を知らない……という設定。せっかく記者が特ダネをつかんできても、デスクが「上から圧力がかかった」とか言って、闇に葬ってしまうのである。
 僕はかねがね、この設定に疑問を感じていた。いくら政府が「この件は報道するな」と命じたって、すべてのマスコミがそれに従うものだろうか。中には政府に批判的な新聞もあるだろうから、絶対にどこかが報じるんじゃないか、と。

 ところが。

 それが現実に起きていることが明らかになった。

 今、宮崎県で口蹄疫が猛威をふるっている。偶蹄類(牛、水牛、山羊、羊、鹿、ブタ、イノシシなど)にしか感染しない伝染病で、人間には無害(ごくまれに感染することがあるが、家畜の場合ほど重い症状は出ず、死亡例もない)であるものの、感染力が強いため、1匹でも感染した家畜が見つかったら、周囲の牛やブタもすべて殺処分しなければならない。また、感染を拡大しないよう、周辺地域の移動は制限しなくてはならない。
 過去にも何度か日本で口蹄疫が発生したことはあるが、どれも殺処分された家畜の数は数百匹レベルだった。ところが、今回の宮崎県での口蹄疫では、すでに6万2000匹の家畜(うち5万匹以上がブタ)が殺処分されている。
 6万2000匹と数字だけ書いてもピンとこないかもしれない。仮に1匹のブタや牛を地面に横たえると平均1平方m(仔牛や仔ブタも多いだろうから)が覆われるとすると、約6万2000平方メートル。東京ドームの面積が4万6755平方メートルだから、殺処分された家畜の死体を地面に並べると、すでに東京ドームを上回る面積になっているのだ。
 現地では死体を埋める作業が追いつかず、大変なことになっているらしい。
 大事件である。

 中でも批判されるべきは、赤松農林水産大臣の無責任ぶりだ。宮崎県で非常事態が進行中、日本の畜産業の危機だというのに、この人、4月28日から中米に外遊に行ってしまったのである!
 5月8日にようやく帰国したものの、真っ先に駆けつけたのが、宮崎ではなく、栃木県佐野市で開かれた民主党議員の講演会発足式!
 5月10日(発生から3週間目)になってようやく宮崎を訪れたものの、現場には出向かない!
 そのくせ「一部報道では対応が遅いと言われているが心外だ。できることはすべてやっている」と発言。
 そのうえ「自民党議員の同席は認めたが、発言は許してない!」ときたもんだ。

 なんかこれに似た小説があったな……と思ってたら、ついさっき、思い出した。マレイ・ラインスターの「禁断の星」だ。ある惑星で発生した疫病が、硬直化した制度と官僚の無能のせいで、どんどん拡大していってしまうという話。
 あれを読んだ時は、「かなり誇張されている」「現実にはここまで愚かな奴はいない」と思ったけど……現実にあるんだな、こんなことが。

 政府と赤松農林水産大臣の責任については、マスコミはガンガン叩くべきだと思う。
 にもかかわらず、奇妙なことに、新聞もテレビもこの件を大きく扱わない。すべてのワイドショーやニュース番組をチェックしたわけではないが、新聞のテレビ欄を見る限り、ワイドショーがこの事件を取り上げたことはないようだ。
 僕が購読している産経新聞の記事を調べてみたのだが、4月20日に最初に口蹄疫に感染した牛が見つかった時のニュースはそこそこ大きかったものの、以後、感染が拡大しているにもかかわらず、ほとんどのニュースが、数行から十数行の短い記事ばかり。
 5月5日になってようやく、やや大きめの記事が出たが(この時点ですでに2万8000匹が処分されている)、風評被害を心配する声ばかり。被害の正確な実態や、畜産農家の生の声はもちろん、政府の対応への批判など、まったくない。
 5月8日朝刊の2面に、初めて政府批判の記事が載った。でも、その隣の「テレサ・テン 歌声再び」というニュースと、面積は大差ない。赤松大臣の問題については、たった5行しか触れられていない。

 しかもこの記事、前日の東スポの記事の後追いだった(笑)。いやー、この非常事態に、まともな記事を載せてるのが東スポだけってのがすごいわ。
 こっちは5月9日25面のニュース。 一見すると大きい記事のように見えるけど、横の「タクシー備品/ネット売買横行」というニュースより面積が小さい。何でだよ!? その程度の重要性だっていうの?




 ちなみに、今日(5月11日)の産経新聞朝刊には、口蹄疫関連のニュースはまったく載っていなかった。

 なぜこんなにも扱いが小さいのか? マスコミが大きく扱うことで、風評被害が起きるのを恐れているとも言われる。
 だが、風評被害を防ぐ最善の方法は、事実をありのままに報じて、「人には無害」「万が一、口蹄疫にかかった家畜の肉を食べても安全」といったことを周知徹底したうえで、国民の理解と協力を求めることだろう。
 情報隠蔽をやらかすような政府やマスコミの言うことなんて、みんな信用しなくなる。逆にネットでデマが垂れ流されることを心配すべきだろう。
 また、マスコミが現地で取材しないのは、農水省が「現場での取材は、本病のまん延を引き起こすおそれもあることから、厳に慎むよう御協力をお願いします」と指示しているからだとも言われる。しかし、それなら現地周辺で関係者の声を聞いたっていいはずだ。インタビューだけなら電話でもできる。大きく扱わない理由にはならない。
 どうもマスコミは(東スポを除いては)政府の言いなりのようである。
 民主党政権への不信も大きいけど、こんなことがあるんじゃ、マスコミは信用できない。

  

Posted by 山本弘 at 16:30Comments(32)TrackBack(1)事件

2009年10月04日

本をラー油と間違えた人たち

 マイミクさんの日記で知った話題。
『妻を帽子と間違えた男』という本があったけど、なんと、本をラー油と間違える人がけっこう多いという。

 問題の本は、楽天市場で売られている辺銀愛理『ペンギン夫婦がつくった石垣島ラー油のはなし』(マガジンハウス)。テレビなどで紹介されて人気の「石垣島ラー油」を製造販売している人の自伝らしい。

http://item.rakuten.co.jp/book/5826306/

 この本のレビューを見ると、12人中11人が1個という惨状。
 というのも、その11人は、この本をラー油だと思いこんで買ったというのである。
 コメントを時系列順に並べて見ると、

購入者さん
評価1.00 投稿日:2009年01月10日
ラー油そのものが買えると思い2つも購入するも、届いたのは本で、かなり落ちました↓↓↓

購入者さん
評価1.00 投稿日:2009年01月21日 楽しみに‥
紛らわしいです。
私もラー油だと思い購入。
即、返品です。

購入者さん
評価1.00 投稿日:2009年01月21日
テレビでやっててペンギン夫婦のラー油で検索して、ラー油を二つ頼んだつもりが本がニサツ来てしまった〓

購入者さん
評価1.00 投稿日:2009年02月20日
私もラー油と勘違いしてしまい2本購入。
注文して翌日気付いたのですぐにメールしたのですが、商品が届いてしまいました。
返品できず困っています。

 このへんまではまだ自分の勘違いを認める内容だったんだけど、だんだん逆ギレする人が増えはじめる。
タカタカ0413さん (1件)
40代/男性
評価1.00 投稿日:2009年04月27日
???大失敗! 石垣島ラー油と思い、直ぐに購入手続きしたが、書籍が届いて、驚いた!石垣島ラー油・商品そのものとの区別をはっきりしてほしいし、返品も出来なく、1575円を捨てたみたいで大変、不甲斐ない気持ちである!書籍は全く読む事もなく、古本屋で157円で引き取ってもらった!楽天市場ももう少し返品に対して考えてほしい!

classy0625さん (698件)
30代/女性
評価1.00 投稿日:2009年05月21日
ラー油だと思いこみ間違って購入してしまいました・・・

購入者さん 評価1.00 投稿日:2009年07月06日
ほんとに紛らわしい!!
みなさんと同じように、ラー油と思い2つ購入しました。開けたら本が入っていて…当然2冊…一瞬、んっ???何が何だか分からなくなりましたね!あの写真が載っていれば誰もがラー油と思いますよね!!もう少し購入する側の立場にたって考えて下さい。返品受けつけお願いしますよ!!

購入者さん 評価1.00 投稿日:2009年07月16日
 マジで最悪です。石垣島ラー油だと思い買いました 。あれじゃあ間違います。まだ届かないのですがキャンセルしたいです。じゃなきゃ返品したいのですがどうなのでしょうか?

購入者さん
評価1.00 投稿日:2009年07月19日
紛らわしい上に、キャンセル連絡しても「無理です」言われ、さらに返品もできないとはあきれたシステムです(笑)

ぽん3801さん (1件)
評価1.00 投稿日:2009年07月19日
ありえない!!ラー油だと思って購入したのに紛らわしすぎます。載せ方変えたほうがいいですよ?

「あの写真が載っていれば誰もがラー油と思いますよね!!」
「あれじゃあ間違います」
「紛らわしすぎます」


 いや確かに、表紙にはラー油の写真が載ってるけど、
「楽天ブックス」で、
 一番上に「」と書いてあって、
『ペンギン夫婦がつくった石垣島ラー油のはなし』という商品名で、

著者: 辺銀愛理
出版社: マガジンハウス
サイズ: 単行本
ページ数: 135p
発行年月: 2008年08月

 と表記されていて、
 その下に書籍の内容紹介も載ってるのに、

「紛らわしい」?

 むしろ、どうすりゃそんな器用な勘違いができるのか知りたいんだけど。

 間違える人が続出したせいか、途中から「※こちらは本です。ラー油ではありません」という但し書きがつくようになったらしいのだが、それでもやっぱり間違える人がいる。

にんじん一本さん (2件)
20代/男性
評価1.00 投稿日:2009年08月02日
やられた
紛らわしい。ラー油だと思い5個買ったのですが、本でした(+_+);本5冊って使い道なさすぎです。複数買うのわかってるんですから確認のメールぐらいほしかったです。他の所は確認のメールありましたよ。普通は、おかしいと思うのですが・・・目立たない所にラー油ではありませんと書かれても。目立つようにお願いします。

 自分のドジを他人のせいにするなあ!(笑)
 1575円の本5冊って言ったら7875円だよ? けっこうな額だよ。
 そんな買い物をするのに、商品の解説をろくに読まずにクリックしたの?
 信じられない。
 世の中にはそそっかしい人がこんなに多いとは。こりゃあ、オレオレ詐欺の被害が跡を絶たないわけだ。

 それにしても、
「こちらは本です。ラー油ではありません」
 というフレーズはシュールであるな。
 僕も『地球最強姉妹キャンディ』という本を出してるわけだが、「こちらは本です。キャンディではありません」という但し書きをつけなくちゃいけないのかしらん?

  
タグ :ラー油

Posted by 山本弘 at 18:28Comments(11)TrackBack(5)事件

2009年06月11日

「ファフロッキーズ」じゃありませんから

 日本でもファフロツキーズ現象が起きたと話題になっている。空からオタマジャクシや魚が降ってきたというのだ。

msn産経ニュース(6月8日)
msn産経ニュース(6月9日)
msn産経ニュース(6月11日)

 ニュースや新聞の報道を見る限り、確かに奇現象ではあるものの、昔から数多くの報告がある典型的なファフロツキーズで、その意味ではあまり目新しくはない。
 ファフロツキーズについては、『神は沈黙せず』の中でかなりのページを割いて解説したので、今さら語るのはやめておく。知りたい方は読むように(笑)。


 さて、今回の騒動で気になったことがひとつ。
 グーグルで検索してみると――

●ファフロツキーズ 234件

●ファフロッキーズ 6320件

 ガビーン! 「ファフロッキーズ」の方が多い!?
 しかもグーグル、「ファフロツキーズ」と入力したら「もしかして『ファフロッキーズ』」って訊いてきやがるし!
 スペルはFafrotskiesである。「Falls From The Skies」(空からの落下物)の略。 命名者は有名な超常現象研究家のアイヴァン・T・サンダースンだ。彼はオーパーツ(OOPARTS = Out Of Place Artifacts)という言葉も発明している。こういう変な略し方が好きなのかもしれない。
 このスペルをよく見てほしい。もしかしたら「ts」は「ツ」ではなく「ス」と発音する可能性もある。つまり「ファフロツキーズ」もしくは「ファフロスキーズ」である。
 でも、「ファフロッキーズ」にはならんだろう、どう見ても。

 何で僕がこれにこだわるかというと、「ファフロツキーズ」という表記を日本に広めたのは、たぶん僕だからである。
 もう10年近く前になるが、『神は沈黙せず』の執筆をはじめてた頃、魚や蛙が空から降ってくるという現象を出そうとして、それをどう呼ぶべきか悩んだ。 日本語の資料(日本人の書いた超常現象本や、海外の超常現象本の翻訳)をかたっぱしから調べたけど、名前が見つからない。
 そこで、あるメーリングリスト(と学会ではない)で、「魚や蛙が空から降ってくるという現象を指す言葉はないのでしょうか?」と質問してみた。
 そうしたら、海外では「Fafrotskies」と呼んでいる……と教えてくださったのが植木不等式氏である。

 スペルは分かったけど、悩んだのがこの発音。当時、海外のサイトを調べたものの、スペルは載っていてもどう発音するのかが分からない。
 英語に詳しい人に相談したりして、たぶん「tskies」は「ツキーズ」と表記するのが妥当なんじゃないか……と判断して、『神は沈黙せず』の中で「ファフロツキーズ」という表記を使用したわけである。
 つまり、『神は沈黙せず』以前に、日本の書籍で「ファフロツキーズ」と表記した例は(皆無とは断言できないが)ほとんどなかったはずなのだ。

 じゃあ、「ファフロッキーズ」と変な表記をはじめたのは誰なのか……と調べてみると、どうもこの「超常現象最前線」というサイトの記述(2000年1月16日)がいちばん古いようだ。

空からの落下物
http://www.fitweb.or.jp/~entity/kaiki/rakkabutu.html

 このサイトの作者は誤って、Fafrotskiesの命名者をチャールズ・フォートだと書いている。「ファフロッキーズ チャールズ・フォート」で検索すると、このページをコピペしたらしい文章が多数見つかる。
 ちなみにこの「超常現象最前線」の作者は飛鳥昭雄の信奉者で、このサイトの記述の多くは飛鳥本が元ネタである。このページの最後に書かれている大気プラズマうんぬんというのも、もろに飛鳥説である。
 だから「ファフロッキーズ」という表記も、もしかしたら飛鳥氏の本のどれかに出てくるのかもしれない……と思うのだが、ちょっと飛鳥氏の著書は数が多すぎて、調べようにもどこから手をつけていいものやら。

 さらに検索してみて分かったのが、「ファフロッキーズ」と表記しているページの多くが、つい最近、石川県にオタマジャクシが降ってきたニュースが報じられてから書かれたものだということ。
「空からの落下物」というキーワードはもちろん、「ファフロッキーズ」で検索しても、この「超常現象最前線」の記事が最初にヒットする。正しく「ファフロツキーズ」で検索しようとしても、グーグルがお節介にも「ファフロッキーズ」の間違いでしょ?と言ってくる。
 そのため、今度の事件で初めて「ファフロッキーズ」もしくは「ファフロツキーズ」という言葉を耳にした人が、興味を抱いて検索してみて、「超常現象最前線」を読んでしまう。その結果、誤った記述がどんどん広まっているらしいのである。
 当然、それといっしょに「大気プラズマ説」などというトンデモ説も広まっているわけだ。

 ちなみに僕の知り合いが今回の事件で、テレビ局から電話取材を受けたのだが、その際、「プラズマが原因の可能性はありますか?」と質問されたそうだ(笑)。テレビ局のスタッフまで「超常現象最前線」に(さらにその元になっている飛鳥説に)汚染されているらしい。
 もちろんその人は「それはないと思います」ときっぱり答えたそうだ。

 昔から超常現象大好きな僕は、この際、声を大にして言う。
「ファフロッキーズ」じゃありませんから!
 命名者はチャールズ・フォートじゃありませんから!
 飛鳥昭雄の言ってることを信じちゃだめですから!
(笑)

  
タグ :超常現象

Posted by 山本弘 at 16:53Comments(9)TrackBack(2)事件

2008年06月19日

あなたの知らない児童ポルノの真実

 こんなページを作ってみた。

あなたの知らない児童ポルノの真実

 実はこういうページを作るべきだとは、何か月も前から思っていたのが、ついつい先延ばしにしていた。しかし、事態が急展開。このままではじきに児童ポルノ法改正案が通ってしまいそうな情勢だ。そこで未完成だが公開することにした。
 これからさらに、「性犯罪を犯すのはどんな奴なのか」「規制に賛成しているのはどんな人なのか」「言論の自由、思想の自由はどこまで認められるべきか」といった問題について、具体的なデータを示しながら書いてゆくつもりだ。

 それにしても、調べていてあらためて思い知ったのは、児童ポルノや児童ポルノ法についての基本的知識が欠如している人が実に多いということ。
 たとえば、規制推進を訴えている日本ユニセフ協会の広報部長にインタビューした人がいるのだが、

マンガ論争勃発のサイト

--いま、(現行法に含まれていないマンガ・アニメ・ゲームをはじめとする「子どもポルノ」が)問題になっているという認識ですが、その根拠としてはどのようなデータがあるのでしょうか。
中井さん:明確にはデータというよりも、アネクダートル・データ(註・逸話的、伝聞的なデータで、数値には出ないもの)です

--チャイルドポルノプロダクションアクトには、合憲判断は出ているのですか?
中井さん:そこまで踏み込んだ質問はしていません。
--すると、そういった日本製の漫画やアニメが関係していることを示す数字はお持ちではないのですか?
中井さん:はい。
--実際の判決文等はお持ちではない?
中井さん:ないですね。

--スウェーデンではどの法律によって取締りが行われているのですか?
中井さん:ごめんなさい。正確な物はわかりません。
--スウェーデン刑法では取締りの対象について「児童ポルノ写真」と明記されていることはご存じですか?
中井さん:いえ、知りません。

現状、お持ちの情報ですと「多くの国はそれを禁止しています」というのはミスリードになるのではないでしょうか?
中井さん:そうですね。

--具体的に、専門家とか漫画家と会合をもつ予定は?
中井さん:いまのところありません。


 何じゃそりゃあ!!
「ありません」「知りません」「わかりません」の連発。マンガの規制を訴えているのにマンガ家と会おうともしない。要するに、自分たちが規制を訴えている対象に対して、ろくに知らないし知ろうともしていないのである。

 しかし、規制賛成派ばかりを責めるわけにもいかない。反対派にも無知な人はいる。

 mixiのあるコミュで、児童ポルノ法が改正されたら焚書にされかねない作品を挙げるスレッドができた。
 たとえば竹宮惠子の名作『風と木の詩』などは、少年のセックス・シーンが何度も出てくるので、児童ポルノ法の規制が創作物にまで及んだ場合、「児童を相手方とする又は児童による性交又は性交類似行為に係る児童の姿態」という児童ポルノの定義にひっかかるので、確実にアウトである。
 同様に、世間に氾濫しているBLもののマンガの多くも、セックス・シーンがあってキャラクターが18歳未満であればアウトである。業界は壊滅的な打撃を受けることは間違いない。ロリコンマンガだけが規制の対象になるかのように誤解している人もいるが、児童ポルノ法には男女の区別はないのだ。児童ポルノ法改正は、ロリコンだけではなく、腐女子のみなさんにとっても重大問題なのである。
 他にも、『クレヨンしんちゃん』は性器を過剰に露出しているからまずいだろうし、『BLACK LAGOON』のヘンゼルとグレーテルとかもまずかろう。

 そこまではいい。

 しかし、「焚書にされかねない作品」を書きこんでいる者の中には、明らかに児童ポルノ法で規制対象になるはずのない作品を列挙している者が何人もいたのだ。虐殺シーンがあるから『ガンダム』シリーズはアウトだとか、年下の少女との恋愛行為を容認しているから『月詠』や『リゼルマイン』はアウトだとか、ルパンや不二子が裸になるから『ルパン3世』はアウトだとか、少年がボクサーパンツ1枚で出てくるから『はじめの一歩』はアウトだとか……。
 あきれた。本当にあきれた。
 言うまでもないが、児童ポルノ法が規制対象とするのは18歳未満の児童の性表現のみである。いくらマンガの中に残虐描写が出てこようが、児童ポルノ法は適用されるわけがない(青少年社会環境対策基本法案あたりとごっちゃにしてないか?)。未成年者の恋愛が描かれていようと、具体的にセックス・シーンやそれに類する表現がないかぎり、ポルノと判定されるわけがない。ルパンと不二子は明らかに18歳以上だから関係ない。ボクシングについては言わずもがな。
 規制に反対する気持ちは分かる。しかし、行き過ぎて被害妄想に陥らないでいただきたい。ちゃんと児童ポルノ法の条文ぐらいは読もう。「何が規制対象になるのか」ということも把握しないで反対するんじゃ、無知なまま規制を叫ぶ連中を笑えないよ。

  

Posted by 山本弘 at 14:01Comments(1)TrackBack(0)事件

2008年06月12日

パラレルワールドの自分



 6月8日。
 宿泊していた新宿のホテルを10時にチェックアウトした後、遅い朝食を食べ、紀伊國屋で少し本をあさる。その後、CDを買うため秋葉原に到着したのが1時50分頃。 そうしたら、えらい騒ぎになっていた。
 最初は何か分からず、「交通事故でも起きたのか」と思っていたのだが、それにしては報道のヘリが飛び回っていたり、野次馬も多い。そのうち、妻から「今、秋葉原で通り魔が出たってニュースでやってるよ」というメールが届いた。 本屋に寄らずに秋葉原に直行していたら、事件に遭遇していたかもしれない。
 いや、僕が通り魔に刺し殺されていた世界も、きっとどこかにあるに違いない。

 SF作家ラリイ・ニーヴンの短編集『無常の月』(ハヤカワ文庫)の中に、「時は分かれて果てもなく」という短編が収録されている。
 パラレルワールドの存在が実証された世界で、原因不明の自殺や無差別殺人事件が続発する。事件を捜査していた刑事は、無数のパラレルワールドにはまったく別の人生を歩んでいる自分が大勢いるという事実が、自殺者や殺人者の心理に影響を与えているのではないかと思いつく……。
 想像していただきたい。パラレルワールドにはありとあらゆる可能性が存在する。たまたま買った宝くじで1等が当たってあなたが大金持ちになっている世界も、当然、どこかにあるはずだ。その一方、悲惨な人生を歩んでいるあなたも大勢いる。職にあぶれ一文無しになっているあなた。難病にかかってベッドで寝たきりになっているあなた。人生に絶望して自殺しているあなた。誰かに殺されているあなた。数々の体験を経て性格が歪み、ついには無差別殺人者になってしまったあなた……。
 不安にならないか?
「そんなことあるわけないじゃないか」と笑ってはいけない。現代物理学では、パラレルワールドが存在する可能性が高いとされている(興味がおありなら「エヴェレット 多世界解釈」で検索してみてほしい)。パラレルワールドが存在するなら、そうなる可能性がわずかでもあるかぎり、あなたが不幸のどん底にある世界、あなたが死んでいる世界、あなたが犯罪者になっている世界も、必ずどこかにあるはずなのだ。
 僕は子供の頃、パラレルワールドという概念を初めて知った時から、ずっとそれを考え続けてきた。
 この世界での僕は、小説家としてそこそこ成功している。愛する妻と子供がいて、けっこう幸せな人生である。ここまで登りつめたのは、才能もあったのだろうが、運の要素もあったことは否定できない。僕がデビューできず無名のフリーターのままの世界、結婚できず寂しい日陰の一生を送っていた世界は無数にあることだろう。中にはきっと、今この瞬間、僕が硫化水素で自殺している世界、僕が秋葉原で刃物を振り回して大勢の人を殺傷している世界もあるに違いない。
 だから僕は、秋葉原通り魔事件の犯人を憎みながらも、「自分と違う人種だ」という感覚は抱けない。僕も悪運が重なったうえに意志が弱かったら、ああなっていたかもしれないからだ。

 今回の事件では、例によって一部マスコミが、犯人の動機をゲームやアニメと関連づける報道をしている。中学時代の卒業アルバムに『テイルズオブデスティニー』のキャラクター(剣を持っている)が描かれていたとか、高校の文集の中に『エヴァンゲリオン』の綾波レイの台詞があったとか。
 アホか。
『エヴァンゲリオン』のファンは少なく見積もっても100万人はいる。ゲームに出てくる剣を持ったキャラクターの絵を描く中学生にしたって、日本中に何万人もいるだろう。そのうちの1人が無差別殺人をやったから、因果関係がある? そんなことを言う奴、頭がどうかしてないか?
 最近になって残虐な事件が増えたと思いこんでいる者も多い。それも間違いである。最近の事件だから記憶に残っているというだけのことだ。ゲームやテレビがまだ無かった昭和初期にも、現代と同様の、あるいは現代のそれを上回る猟奇的犯罪が頻発していたことは、管賀江留郎『戦前の少年犯罪』(築地書館)という本で、豊富なデータを挙げて立証されている。「最近の若者はキレやすい」などというのは大嘘なのだ。

 僕がいつも不思議に思うのは、残虐な事件が起きるたびに引き合いに出されるのがアニメやゲームだということだ。サスペンスドラマや時代劇やスポーツ中継が槍玉に挙げられることは、まずない。
 おかしくないか?
 サスペンスドラマの中では、人が刺されたり絞め殺されたり毒殺されたりするシーンがしょっちゅう出てくる。実物の人間が演じているのだから、アニメとは比べものにならないリアリティだ。
 時代劇では、毎回、主人公が刃物を振り回して、大勢の人間を斬り殺す。しかもそれが悪いことではなく、正しいこととして描かれている。
 ボクシングの中継は、人間同士が倒れるまで殴り合うところをえんえんと見せている。剣道は棒きれで頭や腹をどつき合う。フェンシングは剣で突き合う。レスリングやアメフトについては言わずもがな。
 にもかかわらず、そういうものは無害とみなされている。今年3月に茨城で起きた通り魔事件にしても、犯人がゲームの全国大会で準優勝したことが、事件と関係があるかのように報じられた(その「ゲーム」というのは『DOA』のビーチバレーだった)。その一方、犯人がかつて弓道部に所属していたことは、まったく問題にされなかった。弓はもともと人や獣を殺傷する道具である。いったい、ビーチバレーのゲームが弓矢より危険だと思う理由は何だ?

 反アニメ・反ゲーム論者が、サスペンスドラマや時代劇やスポーツ中継を危険視しない理由は簡単だ。それは彼らも見ているからだ。
 彼らは残虐な事件の報道に接するたびに、「こんなことをやる奴は俺とは違う人間だ」と思いこもうとする。そして、犯人がゲームやアニメが好きだったと報じられると、「それだ!」と飛びつく。犯人が異常になったのはゲームやアニメのせいだ。俺はそんなものを見ていない。だから正常だ……。
 そんなことはない。どんな人間だろうと、殺人鬼になる可能性はある。多くの人は「自分が通り魔に殺される可能性」は想像できても、「自分が通り魔になっていた可能性」は想像できない。いや、想像しようとしない。
 安易な「原因探し」など無意味である。サイコロを振って10回続けて1の目が出るという珍しい現象だって、6000万回に1回は起こる。「なぜ10回続けて1の目が出たのか」と問うことに意味はない。
 それと同じで、1億人の日本人の中には、不運や選択ミスが重なった末に人生のデッドエンドを迎えてしまう者が、必ず何人かいる。もちろんそれは犯罪への衝動に負けた本人が悪いのだが、こうした人間が現われるのは確率的にどうしようもないことなのだ。恐ろしいことだし、巻きこまれた被害者の方々は不幸だと思う。だが、いくら時代が変わっても、こうした悲惨な事件は必ず起きるだろう。

 反アニメ・反ゲーム論者が真に恐れているのは、殺人者ではなく、パラレルワールドのどこかにいる「殺人者になった自分」ではないかと思う。その可能性を否定したくて、殺人者と自分の相違点を必死に探そうとしているのではないか。
 犯人に同情しろとは言わないが、まず「犯人だって自分と同じ人間だ」と考えてほしい。自分だって殺人者になっていた可能性はあるのだと。
 それを認めることができず、ありもしない因果関係を信じるのは、それこそ現実逃避というものではないだろうか。

  

Posted by 山本弘 at 13:50Comments(2)TrackBack(0)事件