2017年02月21日

『幽霊なんて怖くない』文庫化

『BISビブリオバトル部〈2〉 幽霊なんて怖くない』が文庫になりました。


夏休みを迎えた美心国際学園(BIS)ビブリオバトル部は、造り酒屋を営む武人の家で夏合宿を開催する。夜、武人の両親や祖母を招待して行われたビブリオバトルのテーマは〈恐怖〉。部員たちはロウソク一本の明かりのなか、それぞれ得意ジャンルを生かしてとっておきの怖い本を紹介するが、投票段階にはある不思議な出来事が……。
http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488737061

 2015年に出版された〈BISビブリオバトル部〉シリーズの第2弾。リンク先でも解説されていますが、今回の表紙は弐久寿です。両親ともに生粋の白人なんですが、日本に帰化していて日本語ぺらぺら。周囲の人に変な二つ名をつけるのが趣味。
 ただ、BB部員じゃないもんでビブリオバトルでは発表せず、空やミーナほど台詞が多くないんですよね。ですから表紙だけでも目立たせてあげようと思いました。
 この巻のビブリオバトルのテーマは、〈恐怖〉そして〈戦争〉。重いテーマなんですが、決してお話自体は重くありません。それどころかギャグもサービス・シーン(笑)もいろいろ。もちろん本をめぐるうんちくも盛りこまれていて、楽しめる内容になっていると自負しています。

 前の巻では声優の池澤春奈さんに解説をお願いしましたが、今回は作家の福田和代さんに書いていただけました。
 福田さんは神戸で『読まなきゃ!』というビブリオバトルを主催されています。僕もお呼びがかかって発表させていただいたことがあるんですが、その時のエピソードも解説の中で触れていただいております。大変に的確で熱のこもった解説でした。ありがたいです。

 また、文庫化に合わせて、自分のサイトを一部更新しました。

『BISビブリオバトル部2 幽霊なんて怖くない』登場作品リンク集
http://kokorohaitsumo15sai.la.coocan.jp/bibliobatllebu002a.html

 作中に登場する本を紹介しています。マクスウェル・テイラー・ケネディの『特攻 空母バンカーヒルと二人のカミカゼ』は、分厚い本ですが面白くて引きこまれますし、もちろん『馬の首風雲録』『野生のティッピ 動物と話す少女』『七時間目の怪談授業』『軍靴のバルツァー』『びっくりモンスター大図鑑』なども、みんなそれぞれ面白いんでおすすめです。

BISビブリオバトル部 埋火家のSFコレクション その2
http://kokorohaitsumo15sai.la.coocan.jp/bibliobatllebu002b.html

 こちらは作中で埋火家の書庫のシーンに登場する本を紹介。古いSFが中心ですが、ジェラルド・ハード『地球は狙われている』はかなりレアではないか思います。

 前作のデータはこちら。

『翼を持つ少女』登場作品リンク集
http://kokorohaitsumo15sai.la.coocan.jp/bibliobatllebu02.html

BISビブリオバトル部 埋火家のSFコレクション
http://kokorohaitsumo15sai.la.coocan.jp/bibliobatllebu04.html


 ちなみに、AMAZONへのリンクが切れていないか確認していたら、カヴァーリ‐スフォルツァの『わたしは誰、どこから来たの』にカスタマーレビューが増えているのを発見。『翼を持つ少女』を読んでくださったんでしょうかねえ?
  


Posted by 山本弘 at 19:51Comments(0)SFPRビブリオバトル

2017年02月17日

『UFOはもう来ない』がラジオドラマになりました!

 僕の小説『UFOはもう来ない』(PHP学芸文庫)がラジオドラマになりました!


 3月13日(月)より、NHK FM『青春アドベンチャー』で放送予定。全10回です。
http://www.nhk.or.jp/audio/html_se/se2017006.html

 内容についてはこちらをお読みください。ユーモラスですが、けっこう本格的なファースト・コンタクトSFです。

http://kokorohaitsumo15sai.la.coocan.jp/ufohamoukonai.html
http://hirorin.otaden.jp/e261002.html

 脚本を読ませていただきましたが、時間の都合でストーリーが一部省略されているところがあり、出てこないキャラクターもいます。
 主人公は千里で、原作通り、大阪弁で喋ります。ただ、さすがに彼女の下品な発言の数々はカットされてます。「これ、●●●●にからませたら絶対に気持ちええで」とか(笑)。NHKだからしかたないですけど。
 でも、プロットは原作に忠実です。テーマもしっかり把握していただいており、大変に好感を持てました。
 お聴きいただければ幸いです。
  
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Posted by 山本弘 at 19:11Comments(1)SFPR

2017年02月17日

僕たちの好きだった80年代アニメ Part.6

山本弘のSF秘密基地LIVE#65
僕たちの好きだった80年代アニメ Part.6


 1980年代──アニメがまだセルに描かれていた時代。でもストーリーや表現の面では、急速に新しい波が押し寄せ、激動の時期を迎えていました。
 山本弘と鋼鉄サンボ、いい歳してアニメが大好きな二人が、あの時代を振り返り、様々な作品の思い出話や裏話、マニアックなトリビアを熱く語りまくるという連続企画。1988年に突入し、そろそろ大詰めです。さて、どんな作品が登場するでしょうか?
 なお、「山本弘のSF秘密基地LIVE」、いつもは毎月最終金曜日ですが、今回は最終木曜日(23日)です。お間違えなく。

[出演] 山本弘、鋼鉄サンボ

[日時] 2017年2月23日(木) 開場・19:00 開始・19:30

[会場] なんば紅鶴(大阪市中央区千日前2-3-9 レジャービル味園2F)(地図)南海なんば駅より南海通り東へ180m・駐車場有

[料金] 1500円  
(店内でのご飲食には別途料金がかかります。入場時に別途ワンドリンクをご購入いただきますのでご了承ください)

お申込みはこちらへ。
http://boutreview.shop-pro.jp/?pid=113283472

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 すみません! いつものLiveWireですが、今月はうっかりして告知するのを忘れてました。
 いつもと違い、木曜日なのでお間違えなく。

 先月はどうにか1988年までたどりつけたので、今回でぎりぎり終わる予定です。おそらく『超音戦士ボーグマン』『トランスフォーマー・ザ・ムービー』『トップをねらえ!』『機動警察パトレイバー』『魔神英雄伝ワタル』『機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争』とかの話が出ます。『ポケットの中の戦争』は特に好きな作品なんで、熱く語りたいです。
 でも、どれももう、30年近く前の作品なんですよねえ……。
 あと、この時代になると、OVAがものすごい本数になってきていて、僕も鋼鉄サンボくんも全体のごく一部しか観てません。ご了承ください。
  
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Posted by 山本弘 at 18:52Comments(1)PRアニメ

2017年01月31日

最近のデマ・2017

 このブログではこれまで何度もデマの話題を取り上げてきたが、最近、続けていくつもの大きなデマが登場して話題になった。
 僕がこの2ヶ月ほどの間に見たデマを、ざっと並べてみる。

大量拡散の「韓国人による日本人女児強姦」はデマニュースか サイトは間違いだらけ
https://www.buzzfeed.com/kotahatachi/korean-news-xyz?utm_term=.ad52LJM536#.jmXg9lJBNL

「韓国、ソウル市日本人女児強姦事件に判決 一転無罪へ」という架空のニュースを流して大規模に拡散させた「大韓民国民間報道」を名乗る偽サイト。その運営者が取材に応じた。

韓国デマサイトは広告収入が目的 運営者が語った手法「ヘイト記事は拡散する」
https://www.buzzfeed.com/kotahatachi/korean-news-xyz-2?utm_term=.esL7QOBE4M#.uc5KGwZ5Nz

ハイスペックで、礼儀正しい若者がデマサイトを作る 就活の失敗からそれは始まった
https://www.buzzfeed.com/daichi/fakenews-about-korea-interview?utm_term=.swn47o1Jg0#.xg2Ewv29yl

 記事の内容を信じるなら、こいつは明らかに異常というわけではないし、そこそこ頭も良さそうだ。思想性や狂信性は感じられない(モラルは欠如しているが)。
 僕が驚き、感心したのは、これまで嫌韓デマでここまで手間をかけた奴はいなかったということだ。たいていのデマはソースへのリンクが貼られていないか、関係のない記事にリンクが貼られているというお粗末なもので、リンク先を見ただけで一発で見破れた。(それでもリンク先を読まず、あっさり騙される奴も大勢いたのだけど)
 しかし、こいつは違う。サイトに載せていた普通の記事までもすべてフェイクだったとか、わざわざ機械翻訳で作った韓国語のページも作成して、あたかもソースがあるかのように見せかけていたというのだからたいしたものだ。それでも韓国語ネイティブの人間には「自動翻訳を使っているのがバレバレ」だったそうだが、韓国語の分からない人間には、一目で見破るのは難しそうだ。僕もいきなりこの記事を読まされてたら、信じていたかもしれない。
 もちろん、こんな奴を擁護するつもりはまったくないが、彼の言い分のいくつかにはうなずかざるを得ない。

「それがフェイクであれ、韓国についてはどんな話題でも信じたいという思いの人、拡散してやろうという人がネット全体にいた。さらに、それを望んでいる人たちも。コンテンツを作りやすいですよね」

「釣られても仕方ないですよね。FacebookやTwitterが身近になった以上、シェアすることは、隣の席の人に『こんな話題があったんだ』というのと変わらない。そのときに、『ソースは正しいの?』と聞くことはないですよね。そういう軽い気持ちで広がっていったのでは」

「デマや噂なんてこの世にありふれている。それに踊らされるのは個人の問題ではないでしょうか。噂を流した側の責務ではない。これからもデマはでき続けるはず。収益化できるかは別ですが」

 そう。こいつが最後の一人ではありえない。きっと今後も、同様の偽サイトを作ってデマを拡散する人間は必ず出てくる。
 だから一人の人間だけを糾弾しても、あまり意味がない。デマは次から次に生まれてくる。次に現われるデマに対して警戒を怠らないことが大切だ。
 デマにひっかからないための心得については、前に書いたことがある。

http://hirorin.otaden.jp/e273766.html

 ある意味、今回の件は幸いだった。こいつは単独犯だったし、平均より頭はいいものの天才というほどではなかったから、賢い人がデマを見破ることができた。
 だが、もし、もっと頭のいい奴が現われ、もっと巧妙な手口でデマを生み出したら?
 あるいは単独ではなく、複数の人間が協力して、デマの信憑性を高めるような別のデマをいくつも流したら?
 そういうことが起きないという保証はない。

 もちろん、ネットに流れているのは嫌韓デマだけじゃない。

「日本のマスコミが捏造報道」が捏造 トランプ大統領の就任式でデマ
https://www.buzzfeed.com/eimiyamamitsu/inauguration-debunk?utm_term=.yf2xz6JrpB#.hebQxm5aYM

 驚いたのはこの記事に「この記事は残念ながら、もう少し整理しないと一読では内容が頭に入りません」「確かに何を言いたいのかすぐに把握できなかった。ひどい記事」というコメントがついていたこと。いや、確かにややこしいタイトルだけど、一読すれば内容は分かるはずなんだけど?

 他にもこんなにデマがあった。単なる誤解によるものから悪質な捏造まで、国際政治の問題から個人的な誹謗中傷、日本のものも海外のものも、右寄りも左寄りもいろいろだ。
「デマなんて自分には関係ない」と思わない方がいい。ネットをやっていたら、誰でも必ずこうしたデマに遭遇するはずだから。

シリア内戦:ホワイト・ヘルメットの人命救助を「ねつ造」とするプロパガンダのうそ
http://bylines.news.yahoo.co.jp/kawakamiyasunori/20161230-00066068/

「トランプ抗議デモ参加者に2500ドル支給の広告」
http://www.washingtontimes.com/news/2017/jan/17/ads-two-dozen-cities-offer-protesters-2500-agitate/

「龍角散のど飴」がドーピング指定? 事実誤認によりデマが広がる
http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1701/11/news072.html

「マクドナルドの肉の正体が明らかに」の根拠は そもそもの裁判がなかった?
https://www.buzzfeed.com/kantarosuzuki/mcdonalds-pinkslime-debunk?utm_term=.yg2z01M2D4#.wgD5Wo4Qql

アパホテル会長の「中国人の予約は受けない」発言、海外メディアの誤報だった
https://www.buzzfeed.com/eimiyamamitsu/apa-hotel-global-times?utm_term=.wgD5Wo4Qql#.loG5mLOGJx

宮城県の巨大カキが「原発事故の影響か」と中国で物議、日本大使館が中国版ツイッターで“真相”説明
http://www.recordchina.co.jp/a160818.html

ソニー・ミュージック乗っ取り、スピアーズさん死亡の偽ツイート
http://jp.reuters.com/article/sony-twitter-cyber-idJPKBN14F15A

「コミケでスリをしたオタクの顔と住所が特定される」とツイート→実際は無関係の別人
http://bylines.news.yahoo.co.jp/shinoharashuji/20161230-00066084/

 あと、この虚報新聞さんのインタビュー記事も読んでおこう。

虚構新聞「ネットの良識を信頼する」 真実が大切にされない時代にジョークは成り立つか?
https://www.buzzfeed.com/takumiharimaya/kyoko-np?utm_term=.xi22XopE0b#.jsxb7JBK1D

「『ファクトチェックを参考にする』『聞いたこともないようなニュースサイトや変なURLの記事を安易にシェアしない』など、デマを拡散させないようできることはたくさんあります」

「ただ、いくら頑張ってもネットから完全にフェイクニュースを失くすことは不可能でしょう。結局のところ、真偽の最終判断は個々人に委ねるしかないです」

「そのファクトチェックですら、今後『フェイクファクトチェックサイト』という悪夢のような虚偽サイトが生まれる可能性もあるので、『ネットの集合知と良識を信頼しています』としか答えられません。ネットユーザーの良識に支えられたからこそ、続けられた13年なので」

  
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2017年01月21日

僕たちの好きだった80年代アニメ Part.5

山本弘のSF秘密基地LIVE#64
僕たちの好きだった80年代アニメ Part.5

 1980年代──アニメがまだセルに描かれていた時代。でもストーリーや表現の面では、急速に新しい波が押し寄せ、激動の時期を迎えていました。
 山本弘と鋼鉄サンボ、いい歳してアニメが大好きな二人が、あの時代を振り返り、様々な作品の思い出話や裏話、マニアックなトリビアを熱く語りまくるという連続企画。1987年に突入し、そろそろ大詰めです。さて、どんな作品が登場するでしょうか?
 なお、「山本弘のSF秘密基地LIVE」、いつもは毎月最終金曜日ですが、今回だけは最終土曜日(28日)です。お間違えなく。


[出演] 山本弘、鋼鉄サンボ

[日時] 2017年1月28日(土) 開場・19:00 開始・19:30(約2時間を予定)

[会場] なんば紅鶴(大阪市中央区千日前2-3-9 レジャービル味園2F)南海なんば駅より南海通り東へ180m・駐車場有

[料金] 1500円  
(店内でのご飲食には別途料金がかかります。入場時に別途ワンドリンクをご購入いただきますのでご了承ください)

お申込みはこちらへ。
http://boutreview.shop-pro.jp/?pid=111826839

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 去年から続いてきたこの企画。ほんとにそろそろ終わりに近づいてます。あと2回ぐらいですかね。
 毎回、パワーポイントで、その年にどんな作品があったかという資料を作ってるんですが、これがもうほんとにめんどくさくて。劇場アニメやTVアニメはともかく、OVA! この時期、ものすごく多かったんですよ。
 厄介なのは、観たはずなのに内容を覚えてないとか、観たかどうかも思い出せないとか(笑)、そういうOVAが多いんですよね。『ルーツ・サーチ』と『LILY-CAT』が頭の中でごっちゃになってたり、『カリフォルニア・クライシス』と『アーバン・スクウェア』と『トウキョウ・バイス』が、どれがどれだか分かんなくなってたり(笑)。えーと、最後に敵のアジトの原子炉が爆発して、主人公がそこから生きて帰ってくるのは『トウキョウ・バイス』だったかな?
 とりあえずあと少し、おつきあいください。
  
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Posted by 山本弘 at 18:24Comments(3)PRアニメ

2016年12月26日

新連載『プラスチックの恋人』

 新作長編が今月から〈SFマガジン〉で連載開始です。

『プラスチックの恋人』イラスト/ふゆの春秋


 時は2040年代。AR技術とロボット技術の融合により、人間そっくりの立体映像をまとい、AC(人工意識)を有し、性機能を代替するアンドロイド〈オルタマシン〉が誕生。それを配備した合法的な娼館〈ムーンキャッスル〉が世界各地にオープンしている。そんな中、日本のキャッスルに、反対運動を押し切って、未成年型のオルタマシンが導入される。
 フリーライターの長谷部美里は取材のために訪れたキャッスルで、12歳の小学生の姿をした美少年オルタマシン・ミーフと出会い、しだいに惹かれてゆく。



 今回の長編、『プロジェクトぴあの』『地球移動作戦』と同じ時間軸上にあります。『プロジェクトぴあの』は2020年代から30年代にかけて、ARが本格的に普及する一方、最初のACが生まれつつあった時代。『地球移動作戦』は人類の多くがACOM(人工意識コンパニオン)と共生している時代の話。この『プラスチックの恋人』はその中間の時代を描いています。だから『プロジェクトぴあの』の中の出来事にも言及されていますし、『地球移動作戦』では普通に出てきた抗老化処置も普及してはじめています。
 今回のテーマは「エロス」です。
 実は『アイの物語』を書いた時から、ずっと気になってたんですよ。人間とロボットの性関係を描いてないということに。
 というか僕って、これまで作中でベッドシーンあんまり書いてないんですよ。(同人誌は別にして)
「詩音が来た日」の中で、詩音のようなアンドロイドが完成したら、いずれ性機能を持つアンドロイドも出てくるという話もちらっと書きましたけど、その先は描いてなかった。話がややこしくなりそうだから、そのへんの話題はわざと避けて通ってたんです。
 でも、ロボットが進化したら、将来、こうしたアンドロイドは絶対に出てくるはず。やっぱりその問題はきちんと描かなくちゃいけないだろうと思ったわけです。
 いちおう眉村卓『わがセクソイド』、石川英輔『プロジェクト・ゼロ』などの先行作は参考にしています。でも、どっちももう30年以上前の話なんで、時代に合わなくなってるんです。特に性に関する意識がすっかり変わってる。
 たとえば、こうした過去作品に出てくるセクソイドって、みんな女性型なんですよ。いや、男性型だって需要あるだろ、と思うんですが、当時の男性SF作家はそれを想像できなかったみたいなんです。
 だから21世紀の今、このテーマはもういっぺん語り直すべきだと思います。

 また、この作品には、成人男性や成人女性の姿をしたセクソイドではなく、小学生ぐらいの外見のセクソイドが登場します。アンドロイドが進歩したら、いずれそういうものも出てくるはず。そこで巻き起こる倫理をめぐる衝突は、けっこう面白いテーマになると思っています。
 
 最初、主人公は人間の男性にして、相手をアンドロイドの少女にしようかと思ったんですが、結局、性別を逆転させることにしました。こっちの方が面白いと思ったものですから。
 第一回はまだ美里とミーフが出会う前なんで、ベッド・シーンはありません。でも、だんだんエッチになっていきます(笑)。お楽しみに。
  
タグ :SFロボット


Posted by 山本弘 at 20:31Comments(10)SFPR

2016年12月26日

冬コミ直前情報

 どうも、長いことブログを放りっぱなしにしていて、申し訳ありません。今月はむちゃくちゃ忙しかったもので。昨日、ようやく今年最後のゲラと契約書その他もろもろを出版社に送って、一息つけました

 毎月、最終金曜は大阪で「山本弘のSF秘密基地LIVE」というイベントをやってるんですが、今月はお休みです。その日は昼間、コミケ会場におります(笑)。なお、次回の「山本弘のSF秘密基地LIVE」は2017年1月28日(土)を予定しています。いつものように金曜日じゃありませんので、お間違えなく。

 さて、冬コミの新刊はこれです。

 12月29日(木) 東ヒ-02a「心はいつも15才」
新刊『モーグリはパンツ穿いてない
40ページ・フルカラー


 僕が女ターザンものが好きなのは有名ですが、実は少年ターザンものも好きなんですよ。自分でも書いてます。『怪獣文藝の逆襲』に収録された「廃都の怪神」。ジャングルの奥地で少年が怪獣と戦う話。

 もちろん『ジャングル・ブック』も好きです。今年はディズニーの映画が公開されたし、ワーナー・ブラザースもアンディ・サーキス監督による『Jungle Book: Origins』を製作中(2018年10月公開予定)とのことなので、僕がずっと貯めてきた〈ジャングル・ブック〉フォルダを解放するのは今かなと思い、『ジャングル・ブック』資料本を出すことにしました。
 メインは、古今東西のイラストレーター(おそらく何百人という数)が、モーグリをどんな風に描いてきたかという話。僕がいちばん好きなのはフランスのピエール・ジュベールという人なんですが、他にもいろんなイラストレーターがいろんなイメージのモーグリを描いてるんですよ。ネットで検索しまくるうちに、恐竜の想像図で有名なチェコの画家ズデニェク・ブリアンの描くモーグリを見つけた時には「うわあ、ブリアンだ!」と感動しました。子供の頃、この人の描く恐竜にすっかり魅せられてたなあ……。
 映像化作品の紹介もいろいろ。もっとも、今年のディズニー映画についてはほとんど触れていません。最新の作品は資料が豊富だから、わざわざ同人誌で取り上げるまでもなかろうと。
 その代わり、1967年のソ連製アニメとか、1992年のベルギーのTVドラマとか、2010年のインド製のCGアニメとか、あまり知られていないものを取り上げてます。もちろん日本の『ジャングルブック・少年モーグリ』とかも。日本よりも海外で人気があるみたいなんです、あれ。
 日本の本では、昭和5年の菊池寛訳のバージョン、昭和27年の南洋一郎バージョンなども紹介。昭和21年に大佛次郎が訳したバージョンもあるらしいんですが、それは手に入れてません。

 今回は、30年以上も同人誌作ってきて、初めてフルカラー本に挑戦しました。当然、モーグリの裸の絵はいっぱい載ってますけど、児童書の表紙や挿絵ばっかりなので健全です。全年齢向け。

 あと、カタログには「『ミステリー・ゾーン』本在庫あります」と書いてありますが、『ミステリー・ゾーン』本と前に出した『世にも不思議な物語』本は、合本にして商業出版が決定していますので、今回は増刷しませんでした。悪しからず。現在、出版に向けて書き直し作業中です。もう少しお待ちください。
  


Posted by 山本弘 at 16:44Comments(7)PRコミケ

2016年11月22日

と学会がやっていたことは「弱い者いじめ」だったのか?・4

 僕はもう、と学会を辞めている。
 http://hirorin.otaden.jp/e312496.html

 理由はいろいろあるが、ひとつの理由は「つまらなくなった」ということだ。
 トンデモ本が少なくなったわけではない。今も多くのトンデモ本が出版され続けている。ただ、新しいものが少なくなってきた。
 日本トンデモ本大賞の候補作は、毎年、僕が選んでいたのだが、ノミネート作のリストを見ても、バラエティが豊富だったのは『人類の月面着陸は無かったろう論』が受賞した2005年の第14回あたりがピークだった。

http://kokorohaitsumo15sai.la.coocan.jp/tondemotop.htm

 以後は、『富を「引き寄せる」科学的法則』のような1世紀も前のトンデモ本や、『新・知ってはいけない!?』のように前に出た本の続編、『秘伝ノストラダムス・コード』のような時代遅れのノストラダムス本、『超不都合な科学的真実』『小説911』『本当かデマか 3・11[人工地震説の根拠]衝撃検証』のように著者本人が唱えているのではなく世間にあふれている陰謀説を寄せ集めた本など、独創的なものが明らかに減ってきている。2012年の第21回、2013年の第22回などは、と学会の会員に呼びかけてもトンデモ本が集まらず、かなり苦しんだ。大川隆法、苫米地英人、中丸薫らの本が何度もノミネートされているのも、ノミネート作が揃わないための苦肉の策だった。
 おそらく僕らは、乱獲によってトンデモ資源を枯渇させたんじゃないかと思う。トンデモってもっと奥が深いかと思っていたら、意外に浅かったんだなと。
 1950年代に書かれたガードナーの『奇妙な論理』を読めばわかるように、現代のトンデモ説の多くは昔から存在しているものか、その焼き直しにすぎない。だからこれから出るトンデモ本の多くも、すでにある説の焼き直しにすぎないんじゃないだろうか。
 だからと学会をはじめた頃と比べて、トンデモ本への関心はひどく薄れている。

 もっとも僕はまったく関心をなくしたわけじゃない。ニセ科学やデマ関連のウォッチングはASIOSの本で続けている。と学会の本と違って、積極的に笑いを取りに行くことは控えるようになったが、それでも多くの人に読んでほしいから、「面白い」と感じさせる文章にする努力は怠っていない。
 世の中には、放置しておくのは危険なニセ情報がまだまだたくさんあるからだ。
 ほんの一例を挙げるなら、「阪神淡路大震災の時に強姦が多発した」というのは悪質なデマで、信じる人が増えたら危険だから、データを挙げて否定している。

http://hirorin.otaden.jp/e427750.html

 ネットの普及により、デマの拡散速度も飛躍的に速くなった。特に、見ず知らずの多くの人を傷つけたり、新たな災厄のタネになるかもしれないデマに対しては、見つけしだい大急ぎで否定する必要がある。だからこのブログでもデマの否定を頻繁にやっている。
本人に直接言うなり手紙やメールを出すなり」などと、のんびりしたことを言っていては手遅れになるかもしれないから。

  


2016年11月22日

と学会がやっていたことは「弱い者いじめ」だったのか?・3

 そもそも『トンデモ本の世界』が出版された1995年はどんな年だったか思い出してほしい。
 そう、地下鉄サリン事件のあった年だ。
 あの事件がどれほど日本を騒がせたか、ご記憶の方は多いはずだ。オウム真理教はオカルトや超能力、フリーメーソン陰謀説や、様々なニセ科学にハマっていた。それらは、マスメディアが無視していたか、あるいは逆に持ち上げていたものだった。(『超能力番組を10倍楽しむ本』でも書いたが、90年代前半まで、超能力を肯定的に扱う番組は実に多かったのだ)
 1995年のあの日まで、ほとんどの日本人はオカルトや超能力や陰謀論やニセ科学にさほど関心がなかったか、あっても「たいしたことじゃない」と侮っていたと思う。
 そこにあの事件が起きた。
 多くの人が存在に気がつかなかった、あるいは何もしないで見過ごしていたものが、気がついたら恐ろしい怪物に成長していた。
「あれはいったい何なんだ!?」と狼狽し、説明を求めていた人たちに、僕らがタイミングよく「トンデモ」という概念を提示した。だから『トンデモの世界』はベストセラーになったのだと思う。
 もちろん、オウム事件に便乗したわけじゃなく、出版予定は前から決まっていて、地下鉄サリン事件がたまたまそれに重なっただけなんだけど。

 これは『トンデモノストラダムスの世界』で書いたけど、僕は五島勉氏が『ノストラダムスの大予言』という本を書かなかったら、オウム事件は起こらなかったと思っている。
 無論、『ノストラダムスの大予言』を読んだ時点で、オウムの台頭を予想するのは誰にも無理だったろう。でも後知恵で見て、因果関係があるのは否定できない。
 言い換えれば、今はまだたいしたことがないように見えるトンデモ説でも、将来、怪物に成長する可能性があるということだ。
 今も日本には、多数のトンデモ説が乱れ飛んでいる。そのどれかが新たなオウム事件の萌芽になるのか、今の段階ではまったく予想できない。でも、常に誰かが目を光らせていなければいけないんじゃないだろうか?

 実際、僕も予想できなかったことがいくつもある。
 たとえば『トンデモ本の世界R』(2001)で、石橋輝勝『武器としての電波の悪用を糾弾する!』という本を紹介した。自分は世界を支配する組織から電波攻撃を受けていると主張する、典型的な関係妄想の本だった。だが、自費出版されたマイナーな本であり、大きな影響力などないと思っていた。
 まさか著者が2003年に民主党推薦で千葉県八街市議会議員選挙に立候補して当選したり、「テクノロジー犯罪被害ネットワーク」なんてものを結成したりするなんて、まったく予想していなかった。

 あるいは『トンデモ本1999』で取り上げた谷口裕司『宇宙からお母さんへのメッセージ』という本。著者は育児文化研究所という団体を主催しており、全国に10万人以上の会員がいるという。この本は、おなかの中の赤ちゃん、それどころかまだ妊娠さえしていない赤ちゃんがテレパシーで語りかけてくるという本だ。地球にはすでに大勢の宇宙人が来ていて、人類を指導しているとも書かれていた。
 僕は育児文化研究所という団体がUFOカルト化していることに漠然と不安は抱いた。
 だが、この時点で、すでに誤った指導のせいで犠牲者が出ていたなんて思いもしなかった。

http://www.jaog.or.jp/sep2012/JAPANESE/MEMBERS/TANPA/H12/000403.htm

『トンデモ本の世界R』(2001)では、谷口祐司氏の別の著書『緊急!マリア様からのメッセージ』を取り上げ、「しかし、笑ってばかりもいられない。この育児文化研究所をめぐって、実は悲惨な事件が起きていたことが明らかになったのだ」(89ページ)と書いて、事件に触れている。
 読み返していただければ、この文章の前後で、僕の文体ががらっと変わっていることに気づかれると思う。『緊急!マリア様からのメッセージ』は笑えるトンデモ本だが、両親が谷口氏の誤った指導を信じために赤ん坊が死んだという事実は、笑ってはいけないと思った。
 しかし、谷口氏の著書を「笑ってはいけない」とも言いたくなかった。むしろ、谷口氏の著書を読んだ人たちが、これがトンデモ本であることに気づかず、笑いもせずに信じこんでしまったことが、悲劇を招いたのだと思う。
 こんなのは笑い飛ばすべきだった!
 もっと早くみんながトンデモさに気がついて笑い飛ばしていれば、悲劇は阻止できたんじゃないだろうか。

 あるいは『トンデモ本の世界W』(2009)で取り上げた『胎内記憶』。胎内の赤ちゃんが母親のへそから外を見ているなどと主張するとびきりのトンデモ本だが、著者の池川明氏が当時よりさらに有名になって、各地で講演会を開いているばかりか、親学推進協会の特別委員や誕生学協会のサポーターをやっているという事実に、育児文化研究所の事件を連想し、軽く戦慄している。
 池川氏一人が信じているだけでなく、いい年した大人、しかも高い地位にある人たちまでもが大勢、「赤ちゃんが母親のへそから外を見ている」などという話を本気にしているらしいのだ。これは十分すぎるほど恐ろしいことではないだろうか?

 正直に言うと、僕もいつも笑っているわけではない。話があまりにもシリアスすぎて、矛先が鈍ることは何度もあった。
 たとえば『トンデモ本の世界U』(2007)で、小出エリーナ『アメリカのマインドコントロール・テクノロジーの進化』を紹介した時のこと。CIAの電波攻撃「マイクロウェーブ・ハラスメント」を受けている(と思いこんでいる)人たちについて、僕はこう書いた。


 どうやら苦しい体験をしている著者たちを支えているのは、自分と同じ体験をしている人が大勢いるという連帯感と安心感、そして巨大な悪と戦っているという怒りと使命感のようである。
(中略)
 だが、僕にはそれこそ「個人の一時的な解消でしかない」ようにしか見えない。ミもフタもないことを言わせてもらえば、「早く病院に行きなさい」と言いたい。現代では統合失調症に効く薬がいくつもある。それらで治癒できるか、症状が改善される可能性は高い。
 だが、マイハラ被害者同士の連帯は、適切な治療から彼らを遠ざけているように思われる。仲間の話を聴くことは、自分の体験が幻覚や妄想ではないと確信させてくれるし、中には「体内にインプラントを埋めこまれるから病院に行ってはいけない」とアドバイスする者もいるからだ。
 だから僕は、最初は笑って読んでいたものの、だんだん笑えなくなってきた。心の病気だからしかたがないとはいえ、治療を受ければ助かるかもしれない人が、自ら救いを拒否して苦しみ続ける姿は、胸が痛む。

 これは僕の嘘偽りない本音である。
 罪もない赤ん坊が愚かな指導のせいで死ぬなんてことはあってはいけない。
 病気に苦しんでいる人には、ぜひ良くなってほしい。
 そのためには、明らかに間違っていることに対して、誰かが「間違っている」と声を上げないといけないと思う。
本人に直接言うなり手紙やメールを出すなり」なんて甘っちょろいことを言っている間に、誰かが死ぬかもしれないのだ。

 最初の『トンデモ本の世界』を出した頃から、僕は『トンデモノストラダムスの世界』という本を必ず1998年に出そうと心に決めていて、ずっと資料の収集を続けていた。
 今の若い人にはピンとこないかもしれないけど、1990年代の日本人の中には、ノストラダムスの予言を信じこみ、「1999年に人類は滅亡する」と思っていた人間がかなり多かったのだ。彼らが1999年になったら、不安になってパニックを起こし、犯罪に走ったり自殺したりするかも……という懸念は、決して杞憂ではなく、当時としてはリアルな危機感があった。
 だから僕は、そうした事態を予防するために、1998年に『トンデモノストラダムスの世界』を出そうと決意した。
 その際、ベストセラーである五島勉『ノストラダムスの大予言』だけに絞りはしなかった。当時すでに氾濫していた大量のノストラダムス本(正確に言えば、ノストラダムスの詩から勝手に未来に起きることを予言する本)をかたっぱしから読んで笑い飛ばした。
 当然、中には五島氏ほど売れていない人、abさんの言う「弱い者」もいた。だが僕は、売れているかどうかで区別しなかった。
 起きるかもしれないパニックを防ぐために、ノストラダムス本はどれもデタラメで、著者たちの主張は信用できるものではないことをはっきり示す必要があったからだ。こんなのは笑い飛ばすべきものなのだと。
 幸い、『トンデモノストラダムスの世界』はよく売れた。1999年7月が近づくにつれ、大手のメディアも危機感を覚えたらしく、メジャーな雑誌や新聞でもノストラダムスの予言を否定する記事が増えた。テレビでもやはりノストラダムス批判の番組が増え、僕もいくつか出演した。マスメディアのウォッチングを続けながら、「ノストラダムスの予言なんて信じちゃいけない」というムードが世間に形成されてゆくのを、確かに感じていた。
 そうして1999年7月は何事もなく過ぎ去った。
 パラレルワールドのことなんか分からない。でも、もし僕が『トンデモノストラダムス本の世界』を書かなかったら──abさんが言うように、「本人に直接言うなり手紙やメールを出すなり」で済ませ、広く世間に警告しようとしなかったらどうなっていたか……それはいつも考える。
 少なくとも僕は、災厄を防ぐために、自分がやるべきことをやったと、今でも誇りを持って言える。
  


2016年11月22日

と学会がやっていたことは「弱い者いじめ」だったのか?・2

 じゃあなぜ、単に間違いを指摘するだけでなく、笑い飛ばす必要があるのか?
 理由は簡単、その方がアピールするからだ。
 前にも書いたが、「どんなに栄養のある料理でも、不味ければ誰も食べない」というのが僕のポリシーである。
 ニセ科学やオカルトを批判している人は、と学会以前からいた。だが、大真面目な主張が多く、大衆にアピールしなかった。内容がいくら正しくても、読んで面白いものではなかったからだ。
 生涯をオカルトやニセ科学との戦いに捧げたアメリカのジャーナリスト、H・L・メンケンは、こんな言葉を残している。

「抱腹絶倒一回は三段論法千回に勝る」

 これは真理だと思う。
 数ヶ月前にもそんな体験をしたばかりだ。ある人が僕に「江戸しぐさ」について訊ねた。その人は「江戸しぐさ」がネットで話題になっていることや、問題のある内容であるらしいことは知っていたが、具体的に何が問題なのかはよく知らない様子だった。
 そこで僕は「江戸しぐさ」信者の主張の中で最も笑える箇所──「江戸っ子大虐殺」について説明した。その人は大笑いして、即座に「江戸しぐさ」は信じてはいけないものだと納得してくれた。
 これが「抱腹絶倒一回は三段論法千回に勝る」である。
 もちろん事実を論理的に説明して批判するのも大事だ。だが、「そんなの信じちゃだめだよ」とアピールするには、笑い飛ばすのが早道なのだ。実際、原田実氏はそうやっている。事実関係をきちんと調べたうえで、「江戸っ子大虐殺」のような笑える部分を指摘するのも忘れない。

 と学会の先輩とも言うべきマーチン・ガードナーの『奇妙な論理』(ハヤカワ文庫)にしても、バージェン・エヴァンズ『ナンセンスの博物誌』(大和書房)にしても、事実の羅列だけでなく、笑える部分にスポットを当てたり、随所に皮肉やウィットを混ぜたりして、読者を楽しませる工夫をしている。
 たとえば『ナンセンスの博物誌』は人種偏見に対する批判に多くのページを割いているのだが、その中で紹介されるレイシストたちの発言と、それに対するエヴァンズのツッコミがいちいち笑える。

(前略)ウェイン大学社会学科のA・M・リー教授が一九四三年のディトロイト人種暴動を調査した時、一人の証人は、映画館の灯がついて黒人の横にすわっていたことがわかった途端に気分が悪くなったと述べた。その男の説明では黒人は「常に悪臭を放つ」のだそうだが、彼の嗅覚は暗闇ではきかないものらしい。

 いかがだろう? こういう手法の方が、大真面目に「人種差別は良くない」と説くより効果的だと思わないか?

 もうひとつ、abさんが無視している(故意になのか、本当に気がついていないのかは不明だが)明白な事実がある。
 それは「トンデモの多くは危険」ということだ。
 たとえば、超能力、オカルト、UFO、予言などは、カルト宗教と親和性が高い。「うちの教団に入って修行すれば超能力が身につきます」とか「ノストラダムスはうちの教祖様のことを予言していた」とか「まもなく世界が滅亡するが、UFOに乗った異星人が私たちを助けに来てくださる」などと宣伝している団体は、いったいいくつあるか、多すぎて見当もつかない。
 そうした話に興味を持ち、真剣に耳を傾けていたら、いつのまにかカルト教団に入信していた……ということも、十分にある。
 ニセ科学も昔からよく詐欺の温床になっている。永久機関が本当にできると信じて出資し、金をどぶに捨てた人は大勢いる。トルマリン、タキオン、マイナスイオンなどのありもしない効果を信じて、どれだけの消費者が金を浪費したか。
 もちろんユダヤ陰謀論などは、特定の民族への憎悪を煽るヘイトスピーチだから、ストレートに危険である。
 だからこうした話題を笑って楽しむのはいいけど、真剣に聴かない方がいい。懐疑的に、笑いながら聴くのが一番である。

 abさんはこうも書いている。


単に書き手の無知や間違いを指摘したいだけなら、本人に直接言うなり手紙やメールを出すなりすれば済む事。

 abさんが本気でこんなことを信じておられるのだとしたら、「人がいい」「現実を見ていない」としか言いようがない。
 僕が『トンデモ本の世界』の、それも最初に紹介した矢追純一『ナチスがUFOを造っていた』の項で、こう書いていたのをお忘れなのだろうか。


 ベテランUFO研究家の高梨純一氏は、矢追スペシャルが放送されるたびに、内容の間違いを指摘した手紙をマスコミ各社に送りつけているという。その熱心さには頭が下がるが、効果があるようにはみえない。(後略)

 そう、どんなに間違いを指摘されても、矢追氏はデタラメな番組を作ることをやめはしなかった。
 矢追氏だけではない。『トンデモ本の世界』の「清家新一」「コンノケンイチ」などの項を読み直してほしい。彼らが批判に対して耳を傾けなかったことがお分かりだろう。僕も一度、清家新一氏に手紙を出し、間違いを指摘したことがあるが、無視された。小石泉氏に送った手紙は受け取り拒否されて戻ってきた。
 副島隆彦『人類の月面着陸は無かったろう論』という本もそうだ。僕は『人類の月面着陸はあったんだ論』の中で詳しく取り上げたし、他にも副島氏の説の間違いを指摘している人は大勢いた。だが、副島氏はそれらの膨大な反論をすべて無視した。
『人類の月面着陸は無かったろう論』の中にはこう書かれている。


 だからここではっきり書いておく。もし私の主張が明白に間違いで、アポロ11号の飛行士たちが月面に着陸していたことの明白な証拠が出てきたら、その時は私は筆を折る。もう二度と本を書いて出版することをしない。これだけの深い決意で私は本書を書いた。本当の人生の一本勝負である。(295ページ)

 しかし、副島氏は2016年現在、まだ本を出し続けている。してみると、いまだに自分の主張が間違いだとは認めていないのだろう。

 トンデモ本シリーズではないが、『“環境問題のウソ”のウソ』という本を書いたことがある。ベストセラーになった武田邦彦『環境問題はなぜウソがまかり通るのか』の間違いを暴いた本である。武田氏が本に載せたグラフは捏造だった。本に書いてあるデータの多くも間違っているか、論理的におかしいものばかりだった。
 また武田氏は、1984年元旦の朝日新聞に「世界の平均気温が上昇すると南極や北極の氷が溶けて海水面が上昇する」という文章が載っていると主張し、「誤報」だと非難していた。だが実際にはそんな文章は存在しなかった。武田氏は僕とのメールのやり取りの中で、自分の間違いを認め、「ともかく修正の努力はします」と書いた。しかし、それから3ヶ月後に出た第10刷でも、依然として初版と同じく、「記事には『北極の氷が溶けて海水面が上がる』と書いてある」などというありもしないことが書かれていた。


 あすかあきお氏など、著書の中で批判した古関智也氏に対して訴訟を起こした。(でもって見事に敗訴)

http://www2.plala.or.jp/daisinjitu/
http://www2.plala.or.jp/daisinjitu/judg/index.html

 僕の知る限り、トンデモ本の著者で、間違いを指摘されて素直にそれを認め、自説を撤回した者は一人もいない。なぜなら──

①デタラメと知っていて商売で書いている。
②本人も完全に信じこんでいる。

 このどちらかだからだ。abさんが言うような、「本人に直接言うなり手紙やメールを出す」という行為は、無視されるだけ。まったく無駄なのである。
 もっときつい言葉で言わせてもらうなら、「本人に直接言うなり手紙やメールを出す」というのは、「間違った考えが世間に広まるのを知っていて、何もしないで見過ごす」のと同義語だ。
 著者だけに言うのではなく、もっと多くの人に、「これはおかしい」「信じちゃいけないぞ」と訴えなければいけないのだ。

 また、トンデモ説の中には、すでに害になっているものも多い。
 たとえば「東日本大震災は「ちきゅう」の起こした人工地震だ」という説は、「ちきゅう」で働いている真面目な研究者たちを「大量殺戮者だ」と言っているわけで、おぞましい誹謗中傷である。アポロ陰謀説だって、苦難を乗り越えて月着陸を達成した宇宙飛行士や、それを支えたNASAの人たちに対する中傷だ。また、「相対性理論は間違っている」という説は、素人でも気がつく間違いに科学者たちが気づいてないと主張している。つまり世界中の物理学者をマヌケだと中傷しているのだ。
 また『水からの伝言』や「江戸しぐさ」のように、教育の世界にまで食いこみ、子供たちに間違った知識を植えつけているものもある。最近では「胎内記憶」なども学校関係者の中に信奉者を広めており、不気味だ。
 abさんはこういう説に対しても、「本人に直接言うなり手紙やメールを出す」でいいと思っているのだろうか? 無辜の人に対する誹謗中傷が行なわれていても、学校で間違ったことが教えられていても、見て見ぬふりをするのが正しいと主張するのだろうか?

 また、僕は「言論弾圧をしてはいけない」と一貫して訴え続けている。たとえば『トンデモ本の世界』のあとがきではこう書いた。


 彼らの思想は間違いだらけだし、しばしば危険な内容を含んでいる。だが、決して彼らを弾圧すべきではない。弾圧は両刃の剣である。歴史を見ればわかるように、間違った思想が弾圧されるような時代では、正しい思想もまた弾圧されるのだ。言い換えれば、奇人たちがおおっぴらに活動できるということは、現代の日本がいかに自由な国であるかという証拠なのだ。

『トンデモ本の逆襲』(1996)のあとがきでは、

 トンデモ本が氾濫している状況に腹を立てる人もいる。だが、こうした本をやみくもに排斥しようとする態度は間違っている。弾圧などしてはならない。明白な実害のある場合を除いては、言論の自由は断固として保証されなければならない。
 無論、トンデモ本を批判する自由、好きな読み方で楽しむ自由もまた、保証されなければならない。それでこそ公平であり、真の言論の自曲である。

 あるいは『トンデモ本の世界T』(2004)のあとがき。

 僕は長いこと、トンデモ本の紹介を行なってきた。トンデモ本の著者の中には、ひどく間違ったことや不快なことを書く者が少なくない。しかし、僕は「彼らを世の中から排除しろ」とか「言論を規制しろ」とは言わない。たとえ自分にとって不快であっても、同じ世界に生きる以上、その存在は許容し合わないといけないと信じるからだ。「理解できない」「不快だ」というだけの理由で他人を排除し合っていたら、世界は滅びてしまう。
 例外は、人を殺したり、金を騙し取ったり、危険なデマをまき散らすなど、実際に他人に害を与えた場合である。そうした者が処罰されるのは当然だ。そうでないかぎり、彼らの言論の自由は保証されなければならない。
 もちろん、僕らが彼らを批判するのも言論の自由だし、たとえ彼らが僕らのことを不快に思ったとしても、それは許容してもらわねば困るのである。「俺は何を言ってもいいが、お前らが俺を批判するのは許さない」というのは公平ではない。
 本を書くという行為を軽く見てはいけない。僕はこうして文章を書きながらも、「間違ったことを書いて笑われるかも」という恐怖と常に背中合わせである(実際、マヌケなミスをやって笑われたことは何度もある)。冒頭の「僕はロリコンである」という文章にしてもそうで、笑われる覚悟をしたうえで、信念を持って書いている。批判されたり笑われたりするリスクを背負う覚悟のない者は、そもそも本を書くべきではない。

「撃っていいのは撃たれる覚悟のある奴だけだ」という言葉は、まことに正しいと思う。何か間違ったことを書いておいて、撃ち返されたら「撃たれた撃たれた」と騒ぐのは情けない。