2015年05月11日

あなたの知らないマイナー特撮の世界・特別版

山本弘のSF秘密基地LIVE#46
あなたの知らないマイナー特撮の世界・特別版

 これまで多くの知られざる特撮作品を紹介してきた「山本弘のSF秘密基地LIVE」。
 今回はその総決算の意味で、1930~40年代のホラー映画、SF映画、ディザスター映画の中から、選りすぐった素晴らしい特撮シーンを紹介いたします。
 アナログな手法を駆使したミニチュア特撮や合成カットの数々は、CGが当たり前になった現代の目で見ると、逆に驚きの連続!
 昔の特撮マンたちの職人芸を、たっぷりご堪能ください。

[出演] 山本弘

[日時] 2015年5月29日(金) 開場・19:00 開始・19:30

[会場] なんば紅鶴
(大阪市中央区千日前2-3-9 レジャービル味園2F / Tel. 06-6643-5159)
南海なんば駅より南海通り東へ180m・駐車場有

[料金] 1500円
(店内でのご飲食には別途料金がかかります。入場時に別途ワンドリンクをご購入いただきますのでご了承ください)

 ご予約はこちらへ。
http://boutreview.shop-pro.jp/?pid=89380574

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 以前から古いホラー映画やディザスター映画の特撮シーンに興味があって、いろいろ集めていたので、それをまとめてお目にかけることにしました。今ではパブリックドメインになっているクラシックな作品ばかりですが、特撮は今見てもほんとに素晴らしいです。むしろCGやデジタル合成なんかなかった時代、よくこんなもの作れたなと感心する映像ばかり。
 あと、この企画、新連載の『怪奇探偵リジー&クリスタル』ともリンクしてます。というのも、6月発売の号に乗る第二話が、まさに30年代のユニバーサル映画を題材にしていて、特殊効果マンのジョン・P・フルトンとかが出てくるんです。この機会に、フルトンってどんなにすごい人だったかを語りたいんですよね。
 いちばん有名なのは1956年の『十戒』の紅海がまっぷたつに割れるシーン(アカデミー特殊効果賞受賞)ですけど、フルトンはそれ以前からいろんな映画の特撮シーンを手がけてたんです。『フランケンシュタインの花嫁』とか『逃走迷路』とかの合成は、ため息が出るほど素晴らしいです。
 もちろん、フルトン以外の人が手がけた特撮シーンもいろいろ紹介します。お楽しみに。
  
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Posted by 山本弘 at 17:54Comments(0)特撮PR

2015年05月11日

新連載『怪奇探偵リジー&クリスタル』

 角川書店の電子書籍マガジン『文芸カドカワ』にて、今月号から連載開始しました。


 時は第二次大戦前の1938年。ロサンゼルスの女性私立探偵エリザベス・コルト(通称リジー)と助手の少女クリスタルのコンビが、毎回、怪奇な事件を捜査するというシリーズ。

 第1話「まっぷたつの美女」は、当時流行していたパルプマガジンの猟奇的な表紙絵に見立てた惨殺事件が起きるという話。

 第2話「二千七百秒の牢獄」は、当時ユニバーサルが製作した幻の特撮映画(もちろんフィクションですけど) をめぐる奇談。

 分かる人には分かると思いますが、『事件記者コルチャック』みたいな話をやってみたかったんですよ。主人公が毎回、いろんなパターンの怪奇事件に遭遇する話。
 あと、『ドクター・フー』とか『トーチウッド』とか『秘密指令S』とかのイギリスの変な番組ってけっこう好きなんで、ああいうノリもやってみたい。
 本当にオカルト現象が起きる話もあれば、合理的に解決する話もあります。タイムトラベラーなどのSF的なガジェットが出てくる話も予定してます。まあ、『コルチャック』だって宇宙人とかロボットとか出てきましたからね。 逆に幽霊とか吸血鬼みたいな、ありきたりの「怪奇」は出ません。
 ジャンルにこだわらず、その回の話がミステリなのかホラーなのかSFなのか読んでみないと分からない、自由奔放でごった煮のようなシリーズにしていきたいです。

 ちなみに、「怪奇探偵」という言葉には二重の意味があります。怪奇な事件を扱うという意味と、探偵自身が怪奇という意味と。
 たとえば、助手のクリスタル。『ゴーストハンターRPG』のシナリオ「月光のクリスタル」を知ってる方なら、最初から正体が分かると思います。そうです、あのキャラクターの設定、流用しました。
 リジーもかなり怪奇なキャラクターなんですけどね。それは読んでのお楽しみってことで。

 あと、基本は「エロとグロ」(笑)。

 エロいシーンとグロいシーンをなるべく入れようと思ってます。特にエロ。毎回、二人のヒロインのどっちかが(あるいは両方が)必ず脱ぎます!
 とにかく徹底的にB級を、それも最高に面白いB級を目指してます。
  


Posted by 山本弘 at 17:32Comments(0)SFオカルトPR レトロ

2015年04月08日

ニセ科学関連のイベント2件

『14歳からのリスク学』および文庫版『ニセ科学を10倍楽しむ本』の発売にちなんで、今月と6月、ニセ科学関係のトークと講演のイベントをやります。
 いずれも、公式の告知から文面をコピーさせてもらってます。

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山本弘のSF秘密基地LIVE#45
ご注意!あなたの隣のニセ科学
http://boutreview.shop-pro.jp/?pid=88474088

 新著『14歳からのリスク学』(楽工社)および『ニセ科学を10倍楽しむ本』文庫版(ちくま文庫)出版にちなんで、今月の「山本弘のSF秘密基地LIVE」はニセ科学の特集です。
『水からの伝言』、『ゲーム脳の恐怖』、『買ってはいけない』、血液型性格判断、地震雲、アポロ捏造説、911陰謀説、反相対論、永久機関など、すでにおなじみのニセ科学に加え、福島第一原発事故以後に台頭してきた放射能をめぐる様々なニセ科学や、最近のニセ科学のトレンドを紹介。それらを傾向別に分類・分析し、なぜ非科学な話が人気を集めるのか、人がニセ科学に惹かれる心理を考えます。
 あなたもすでにニセ科学に騙されているかも?

[出演] 山本弘

[日時] 2015年4月24日(金) 開場・19:00 開始・19:30

[会場] なんば紅鶴
(大阪市中央区千日前2-3-9 レジャービル味園2F / Tel. 06-6643-5159)
南海なんば駅より南海通り東へ180m・駐車場有

[料金] 1500円
(店内でのご飲食には別途料金がかかります。入場時に別途ワンドリンクをご購入いただきますのでご了承ください)
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 毎月のLiveWire、今回はニセ科学特集です。
 ここには書いてありませんが、大阪大学の菊池誠先生にゲストで来ていただけることになりました。濃いトークを繰り広げることになると思います。

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■□■市民社会フォーラム第147回学習会■□■
      山本弘さん講演会
ニセ科学を10倍楽しむ
http://civilesociety.jugem.jp/?eid=29443

日 時 6月7日(日)14:00~17:00(開場13:30)
会 場 シアターセブン BOXⅠ
    http://www.theater-seven.com/access.html
参加費 1000円

 新著『14歳からのリスク学』(楽工社)と文庫版『ニセ科学を10倍楽しむ本』(ちくま書房)を著した山本弘さんに、科学リテラシーとリスク論についてお話しいただきます。
 ニセ科学はもとより、ネトウヨデマ、放射能デマ、陰謀論などなどのつっこみとともに、原発事故をめぐるリスクなどシリアスなこともふれられます。

お申し込みなしでどなたでもご参加できますが、
人数把握のため事前申し込みいただければありがたいです。   
civilesocietyforum@gmail.com まで
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 ニセ科学というのは具体的にどういうものかは本で書いたので、イベントでは「まともな科学とニセ科学の違い」「ニセ科学の傾向別分類」「ニセ科学は何が問題か」「ニセ科学を広める人たちの心理」「なぜ人はニセ科学にひっかかるのか」「どうすればニセ科学を見破れるのか」といった問題を中心に語りたいと思います。
 また、イベントに両方とも来ていただける奇特な方がおられるかもしれませんので、話す内容はなるべく変えようと思っています。
  
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2015年04月08日

『ニセ科学を10倍楽しむ本』文庫化

 2010年に楽工社から出版された『ニセ科学を10倍楽しむ本』が、筑摩書房から文庫になりました。

ちくま文庫 950円+税

 5年前に自分のホームページに書いた文章から、そのまま引用します。

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「ニセ科学っていったい何?」

 大阪大学の物理学者・菊池誠さんは、ニセ科学について、「科学をよそおってはいるが、科学ではないもの」と定義しています。
「波動」「アルファ波」「フォトン」「マイナスイオン」などなど、一見科学的に見える言葉を使ったり、もっともらしい実験をやってみせたりして、科学的なように見せかけているものの、実はぜんぜん科学的ではないもの――それがニセ科学です。
 ニセ科学は、あるはずのないことを「ある」と言い、できるはずのないことを「できる」と言います。正しいことを「まちがいだ」と言い、本当のことを「ウソだ」と言います。「水は字が読める」とか、「水だけで自動車が走る」とか、「進化論は間違っている」とか、「アポロは月に行っていない」とか。

「そんなバカバカしい話を信じているのは、ごく一部の人だけじゃないの?」 

 いいえ、ちがいます。今の世界にはたくさんのニセ科学がはびこっていて、中には何百万人、何千万人もの人が信じてしまっているものがあるのです。
 たとえば中高校生から40代までの日本人1000人を対象に行なわれた調査では、「アポロは月に行っていない」と信じている人が18.5パーセントもいるという結果が出ています。
 9.11テロの真犯人がアメリカ政府だと信じている人は、アメリカ人の15パーセントもいます。
 進化論を信じていないアメリカ人は44パーセントもいます。
 有名な芸能人や、政治家、学校の先生などがニセ科学を信じてしまっている場合もよくあります。科学者の中にもニセ科学をとなえる人がいます。
 あなただって、この本に出てくるニセ科学のいくつかを、すでに信じているかもしれません。血液型性格判断とか地震雲とか『ゲーム脳』とか『買ってはいけない』 とかを。

「でも、おかしな考えをただ信じているだけなら、害はないんじゃないの?」

 そうでしょうか?
 ニセ科学の中には、高い商品を売りつけるもの、健康に害があるもの、人を不安にさせるもの、危険な考えを吹きこむものがあるのです。そうしたことを信じてしまうと、お金を損したり、病気になったり、怪しい宗教や危険な政治思想ににハマったりします。時には死んでしまう場合だってあります。
 それだけではありません。「アポロは月に行っていない」とか「相対性理論は間違っている」といった主張は、偉業をなしとげた人たちをウソつきや無能よばわりしています。そうした説を無責任に人にしゃべったり、ブログに書きこむことで、あなたはそうした人たちの名誉を傷つける行為に加担しているのです。

「そんなもの、禁止してしまえばいいじゃない」

 いいえ。言論の自由というものがあります。名誉毀損やウソの宣伝の場合を別にすれば、ただ単にまちがっているという理由で言論を禁止することはできません。
 犯罪をこの世からなくすことができないのと同じで、ニセ科学をこの世からなくすことはできません。何十年も前に生まれたニセ科学が今でも生き残っている一方、新しいニセ科学が次から次に生まれてくるのですから。せいぜい、ひっかからないように、自分で用心するしかないのです。

「どうすればニセ科学にだまされずにすむの?」

 いちばんいいのは、ニセ科学に興味を持つことです。ニセ科学とはどういうものか、どんな種類があってどんなふうにまちがっているのかをあらかじめ知っておけば、そうしたものに出会ったときに、「あっ、これはニセ科学じゃないか?」とピンとくるでしょう。
 この本のタイトルを『ニセ科学を10倍楽しむ本』としたのは、多くの人にニセ科学に興味を持っていただきたいからです。「ニセ科学なんて興味ないよ」と無視して、本当のことを知ろうとしなければ、かえってニセ科学にだまされてしまいます。

「でも、科学の話なんてむずかしいんじゃない?」

 ご心配なく。かたくるしい書き方をさけ、中学生の夕帆ちゃんという女の子を主役に、中学1年生ぐらいの学力でも理解できるような楽しい読み物にしましたから。
 ニセ科学そのものはデタラメでも、それがどうデタラメなのかを知るのは、きっとあなたの役に立つはすです。


第1章 水は字が読める?
 夕帆ちゃんの通う中学の先生が、「水は字が読める」「〈ありがとう〉と書いた紙を容器に貼るときれいな結晶ができる」なんて、おかしなことを言いはじめた。
 同じことを教えている先生は日本中におおぜいいるという。これは大問題だ! パパは学校に出かけていって、先生と話をする。

第2章 ゲームをやりすぎると「ゲーム脳」になる?
 田舎からやってきたおばあちゃんが、夕帆ちゃんがテレビゲームを1日1時間やっていると知って心配する。
「それは大変! ゲームのやりすぎよ! ゲーム脳になっちゃうわ!」
 学校の先生や親たちも信じているという「ゲーム脳」。それっていったいどういうもの? 本当にゲームが有害だという証拠はあるの?

第3章 有害食品、買ってはいけない?
 また輸入食品から基準値を超える残留農薬が発見されたというニュース。それを見て夕帆ちゃんのママはひどく心配する。
「基準値の2倍だなんて、すごく危険じゃない」
 本当に残留農薬や食品添加物ってそんなに危険なんだろうか。実は「危険だ」「危険だ」と騒ぐ声にだまされていないか?

第4章 血液型で性格がわかる?
 友達の青葉ちゃんが夕帆ちゃんの家に遊びに来た。
「AB型の人は二面性がある」
「B型って性格がひねくれてる」
 などと決めつける青葉ちゃん。
 今や日本人の多くが信じている血液型性格判断。でも、根拠はあるんだろうか。そもそも言い出したのはいったい誰?

第5章 動物や雲が地震を予知する?
 夕帆ちゃんの友達の勇馬くんの飼っている犬が、地震の前日になぜか騒いだという。
 動物が地震を予知するというのは本当だろうか? そして地震の前に発生すると言われる「地震雲」の正体は?

第6章 2012年、地球は滅亡する?
 2012年に地球が大災害に見舞われるという映画を観てきた夕帆ちゃんと勇馬くん。帰りに書店に寄ると、タイトルに「2012年」「アセンション」「フォトンベルト」などとついた本がいっぱい並んでいた。
 天文学者によれば、2012年に地球はフォトンベルトというものに突入するのだそうだ。それほんと?

第7章 アポロは月に行っていない?
 夕帆ちゃんの友達の流菜ちゃんが、インターネットで見つけた話をする。
「アポロが本当は月に行ってないって知ってた?」
 アポロ11号の月面着陸はアメリカのでっち上げで、その証拠もいっぱいあるというのだ。
 興味を持った夕帆ちゃんは、この問題について調べて、夏休みのレポートを書く。ウソをついているのはいったい誰?

第8章 こんなにあるぞ、ニセ科学

 世の中にはまだまだニセ科学がいっぱいある。マイナスイオン、ゲルマニウムブレスレット、フリーエネルギー、ホメオパシー、反相対論、911陰謀説、インテリジェント・デザイン論……だまされないようにしなくっちゃ!

エピローグ うたがう心を大切に

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 ご覧のように、この5年間で古くなってしまった話題もあります。特に第6章。2012年、過ぎちゃいましたしね(笑)。
 全面的に書き直そうかとも思ったんですが、そうなると第6章はまるごと削らなくちゃいけない。また『水からの伝言』や『ゲーム脳の恐怖』のブームなども、また同じようなことが起きないよう、特に若い人たちの参考になるよう、本の形できちんと残しておくことに意義があると思いました。
 そこで文庫版は、楽工社版をほぼそのままの形で再録しつつ、各章末に、この5年間に起きた変化について追加情報を入れることにしました。第1章では「江戸しぐさ」、第2章では「非実在青少年」問題、第3章では2014年の上海福喜食品の食品偽装事件、第5章では2011年の東日本大震災……といった具合です。

 文庫化にあたって、イラストも一新しています。表紙もかわいいですけど、各章扉の絵もいいんですよ。


 書店で見かけたら、ぜひお手に取ってください。
  
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Posted by 山本弘 at 17:32Comments(5)サイエンスPR

2015年03月30日

近頃はやりのお手軽・ニセ歴史

 ニセ科学ならぬニセ歴史というものがある。
 ちょっと前まで、超古代文明がどうこういう話を信じている人が多かったけど(今ももちろんいる)、最近、それが変わってきているように思える。古代ではなく、資料もたくさんある近代の歴史について、嘘やデタラメを書き、歴史を書き換えようとしているものが目立つのだ。
 いわゆる「歴史修正主義」というやつだけど、「主義」など呼べる大層なものじゃない。単なる「素人の思いつき」程度のものを書き殴っただけのものが多い。当然。初歩的な間違いだらけなので、歴史にそれほど詳しくない人間でもツッコめる。
 今回はそういうのをいつくか並べてみた。

●例1・江戸しぐさ

 これなんかまさに、ニセ歴史の典型。前に書いたので、今回は省略する。

http://hirorin.otaden.jp/e362859.html

●例2・「関東大震災時の朝鮮人虐殺はなかった」

『翼を持つ少女』でも取り上げたけど、実際、近年になってこういうアホな説が唱えられ、それを信じる者が出てきている。
 ちなみにこの珍説を最初に唱えた『関東大震災「朝鮮人虐殺」の真実』という本、産経新聞が出版している。AMAZONのレビューを見ると、やはり騙されている人間が多いことがよく分かる。

http://www.amazon.co.jp/dp/4819110837

 ネット上ではきちんと反論ページを作ってくれている方がいる。

「朝鮮人虐殺はなかった」はなぜデタラメか
http://01sep1923.tokyo/

 要するに、震災直後に流れた「朝鮮人暴動」のデマを本気にする一方、虐殺に関する大量の記録や証言をすべてなかったことにするという、まことに単純な手法なのだ。
 一方、『九月、東京の路上で』の方には、上の『関東大震災「朝鮮人虐殺」の真実』に騙されたと思われる者たちが、大量の低評価をつけている。トホホ。

http://www.amazon.co.jp/dp/490723905X/

●例3・「少年犯罪は凶悪化している」

 これなんかも一種の歴史修正主義だろう。「昔の少年犯罪は今ほど凶悪じゃなかった」というニセ歴史を唱えてるわけだから。

稲田朋美政調会長「少年犯罪が凶悪化~」→根拠はあるの? Twitterの議論まとめ
http://togetter.com/li/789102

 竹田恒泰も「特に最近は、少年の凶悪犯罪が非常に増えてて」などと、テレビで堂々とデタラメを言っている。 しかも例に挙げてるのが「女子高生コンクリート詰め殺人事件」! いや、それ最近の事件じゃねーし。27年も前の事件だし。

https://youtu.be/AQLIy8gt3kE
(10分50秒のあたり)

 戦前や戦後すぐの少年犯罪がどれほど凶悪だったかは、少年犯罪データベースを見ればすぐに分かる。最近の傾向を見ても、特に凶悪化しているようには見えない。
 要するに、過去にたくさんあった凶悪事件を忘れているので、「犯罪が凶悪化している」という錯覚が生じるのだ。

少年犯罪データベース
http://kangaeru.s59.xrea.com/

●例4・「インパール作戦は成功したのである」

 太平洋戦争の中でも特に無謀で無計画、大勢の犠牲者を出して失敗に終わったことで名高いインパール作戦。それをまさか賛美する人間が現われるとは夢にも思わなかった。

日本会議のインパール作戦の記述に牟田口廉也中将がツッコム
http://togetter.com/li/792328

インパール作戦はどれほど無謀な作戦だったのか?
http://togetter.com/li/792801

 これほど見事に失敗して何万人もの兵士を無駄死にさせた作戦を肯定的に評価できるんだったら、もう何でもありだぞ!

●例5・「古代の昔から、日本という国は穏やかな民主主義精神に富んだ国家であった」

神話や建国記述「間違ってない」「感動した」 一宮市教委の注意で削除の中学校長ブログに激励
http://www.sankei.com/life/news/150222/lif1502220014-n1.html

 仁徳天皇の「民のかまどは賑わいにけり」という話は、僕も子供の頃に何かで読んだ。理想的な支配者のあるべき姿を示したいい話だと思うし、フィクションだと説明すれば、べつに子供に教えてもかまわないと思う。
 でも、仁徳天皇と昭和天皇、たった2例(しかも一方は伝説というか神話)を元に、こんな結論を導いちゃだめだろ。

> このように、初代、神武天皇以来2675年に渡り、我が国は日本型の民主主義が穏やかに定着した世界で類を見ない国家です。

> 日本は先の太平洋戦争で、建国以来初めて負けました。しかし、だからといってアメリカから初めて民主主義を与えられたわけではありません。また、革命で日本人同士が殺しあって民主主義をつくったわけでもありません。
> 古代の昔から、日本という国は、天皇陛下と民が心を一つにして暮らしてきた穏やかな民主主義精神に富んだ国家であったのです。

 えー(笑)。
 そもそも日本の歴史の中で、天皇がずっと政治の実権を握ってたわけじゃない。
 天皇や将軍が世襲制で、もちろん選挙なんかなく、身分の差もあった時代が「民主主義精神に富んだ国家」ってどういうことだ? この人の「民主主義」の定義って何だ?
 あと、明治維新は日本人同士が殺し合ったんじゃないのか?
 これは完全なニセ歴史。「水伝」や「江戸しぐさ」と同じぐらいデタラメだ。中学の校長ともあろう者が、こんなの子供に教えちゃだめだろ。

 こうしたお気軽・ニセ歴史、どれも基本的な歴史の知識があるか、知識がなくてもちょっと調べればすぐ論破できるものばかり。
 問題は、歴史に関する知識がなく、検索しようともしない人間が多いということ。そういう人間はころころひっかかる。「真実を初めて知った!」と感動するのだ。
 しかも、日本会議とか産経新聞とか、影響力のある組織やメディアが、こうしたニセ歴史を擁護しているという事実。
 彼らもやはり歴史に無知で、ニセ歴史に騙されているのか、それともニセ歴史と知りつつ広めているのか?
 どっちにしてもダメだろ。
  
タグ :ニセ歴史


Posted by 山本弘 at 18:22Comments(22)社会問題

2015年03月30日

無法を夢見る日本人たち

 前に韓国の転覆事故や中国の地震について、おぞましいことをつぶやく人たちがいることを書いたけど。

http://hirorin.otaden.jp/e312078.html

http://hirorin.otaden.jp/e316493.html

 今度はインドのニュースである。

■住民数千人がレイプ容疑者を惨殺 制御きかぬ“怒り”、収拾つかぬ「レイプ頻発インド」
(産経新聞 - 03月17日 20:37)
http://www.sankei.com/premium/news/150317/prm1503170006-n1.html
http://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=133&from=diary&id=3324284

 このニュースに関するmixiのコメント(647件)を読んでいて愕然となった。

>いや、ひどい言い方だけど、これぐらいしないと抑止力にならないのが現実(´・c_・`)観光客だって狙われてるしね(・ε・` )

>レイプ容疑者惨殺、当たり前の仕打ちだよ。それだけのことしたんだから。地獄で反省してね。

>悪人は殺されても仕方がないです。山口県光市での母子殺害事件の犯人や、酒鬼薔薇聖斗も無残な最期を遂げるべきです。悪が天寿を全うする世の中ではいけません。

>けどそれくらいしていいどころかすべきだと思う。レイプ犯は皆殺しの刑でいい!

>この一件の良し悪しは別として、やはり因果応報では?真っ当に生きていれば当然、違った人生だったのだろうしね。悪者が心穏やかに死ねる世の中なんて、それこそ世も末だよ。

>レイプ犯をリンチして亡骸を晒すというのは、寧ろもっとやっちまえと思うのだが、何より…インドという国…気持ち悪い、嫌い(笑)。

>レイプは「精神の殺人」だと考える。無神経な男性諸氏は「あなたの妻」「あなたの娘」がレイプにあったら冷静で居られるか?と考えてみたらいい。極刑でも良いと思う。。。

>レイプ犯は本来これぐらいやって然るべき。複数の人間を殺しでもしない限り、死刑にならないという現代法の方がおかしいと思う。

>法が手緩いから良かったじゃん レイプしたんだから当然だろ

>レイプ犯は、これくらいの仕打ち受けても飽き足りません。むしろこれが普通のような気がします。

>日本は法治国家だから、真似ろとは言わん。でもこの惨殺されたインド人がそれ相応の報いだとは思う。

>かっこいい


 ひー、怖いよー!
 民間人が犯罪者を寄ってたかって惨殺してもいいと思ってる人がこんなにいるよー!

 そもそもこのニュースを最後まで読んだら、この事件、冤罪の可能性が高いことが分かるんだけど、あんたら最後まで読まずにコメント書いてるの?
 と思ったら、ちゃんと最後まで読んだうえでこんなことを書いてる人たちも。

>同意の上というか、強姦ではなかったなら彼はかわいそうだとおもう。でも、本当に罪を犯してて、強姦をしていたなら言葉は悪いけどザマァが正直なところ。

>このニュースの主体の筈の男性は冤罪かもだけど、本当に強姦をしたヤツに対してはそれくらいされて当然。後半の話の男どもに対してやってほしいなと本気で思うんだけどな。

>レイプ犯にはこれくらいの制裁してもいいけど、無実の人にしちゃダメだろ。

>間違えて殺されたらなぁ…でも本物のレイプ犯なら妥当な私刑だが

>冤罪ならこの私刑は最悪やな。ほんまにレイプしたんなら当然やけど。何かが違う。

>日本でも、性犯罪者にはこれぐらいやっていいんでは? 勿論、どう調べても「クロ」な奴に限って。


 冤罪じゃなかったらやっていいのか!?
 いや実際、「やりたい」「日本でもやろう」と表明してる連中もいる。

>これはいい手本やね♪日本でもこれぐらいやらなあかん♪とくに未成年の犯罪者には♪

>川崎中1殺害事件の主犯と取り巻きにはこのくらいやってやりたくなる!

>日本も見習おう!大津のいじめ犯、川崎中1犯人などを始めwww痴漢冤罪を生み出した関係者や人殺し企業の幹部などなどwwww司法で許されても国民に殺される世の中がいい

>日本もレイプ犯を集団リンチで処刑は有りだと思う

>本当の加害者なら全裸にして歩かせ、石を投げつけたうえにバイクにロープでつないで引きずり回して良いんじゃない?日本でもヤってほしいね。ついでに殺人犯も~

>日本の強姦魔も同じ様にしてやれば?


 ひーっ、やめろーっ! 日本を『北斗の拳』や『マッドマックス』みたいな国にする気かあ!?

 まあ、さすがにこんな意見は大勢ではなく(印象としては10人に1人ぐらい)、こういうコメントを批判する声の方が多いんだけど……。
 でも、mixiの中の、それもこのニュースを読んだ人だけでこんなにいるってことは、「悪人はリンチにかけられて殺されるのが当然」「日本でもやりたい」と考えてる人間は、この何百倍、何千倍もいるってことだよなあ……。

 怖いよ。

『翼を持つ少女』の中でも「世の中で最も危険な思想は、悪じゃなく、正義だ」「悪には罪悪感という歯止めがあるが、正義には歯止めなんかない」と書いたけど、実際、こういう人たちは、自分の考えが正義だと信じて疑わないから、始末に悪い。反省もせず、いくらでも暴走する。
 実際、民間人が寄ってたかって無実の人を虐殺するという事件は、日本でも起きている。今から92年前、東京で。
 何かのきっかけで、また同じことが日本で起きる可能性も、無いとは言えない。
  
タグ :社会問題


Posted by 山本弘 at 17:48Comments(10)社会問題

2015年03月30日

『怪獣文藝の逆襲』

『怪獣文藝の逆襲』

角川書店 2052円 発売中
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見届けよ。
世紀の大決戦がいま、幕を開ける

怪獣と特撮を愛してやまない作家、映画監督、気鋭のコンセプト・アーティストが大集結!!
希代の怪獣マニアたちの筆が生みだすオリジナル怪獣が、縦横無尽に暴れまわる、夢の競作集。

迫力に満ちたカバー絵を手掛けたのは、『GODZILLA』『ハンガーゲーム2 キャッチングファイア』『レ・ミゼラブル』『寄生獣』『進撃の巨人』『ターミネーター ジェネシス』ハリウッドで活躍するコンセプト・アーティストの田島光二。

ここでしか味わえない驚きと興奮を、ぜひご堪能あれ。

【本書に収録されている作品】
樋口真嗣「怪獣二十六号」…秘蔵の怪獣映画の企画書、本書で初公開!

大倉崇裕「怪獣チェイサー」…怪獣省のベテラン職員が直面した、いまだかつてない危機。

山本弘「廃都の怪神」…密林の奥深く、先住民に育てられた白人少年が遭遇した恐るべきモノとは?

梶尾真治「ブリラが来た夜」…突如現れた怪獣に呼応するように、血族に隠された戦慄の事実が明らかになる……。

太田忠司「黒い虹」…謎の転校生と奇妙なTVドラマ「世紀の大怪獣ドノポリカ」との意外な関係とは?

有栖川有栖「怪獣の夢」…幼い頃から夢を見る。血にまみれ、おぞましく、神々しい怪獣の姿を……。

園子温「孤独な怪獣」…園監督初の怪獣小説! 映画監督を夢見る貧乏青年が語る、知られざる怪獣映画とは。

小中千昭「トウキョウ・デスワーム」…東京の地下に巣食う巨大な生物はいったい何なのか?

井上伸一郎「聖獣戦記 白い影」…元寇に立ち向かう家清の前に現れた黒い影の正体とは。


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 怪獣小説のアンソロジーです。
 前に『怪獣文藝』という本が出た時に、「何でこの企画で僕に声がかからなかったんだ?」といじけたもんでしたが(笑)、今回はちゃんとお声がかかりました。
 僕の作品「廃都の怪神」は、アフリカ奥地の秘境を舞台に、野性の少年ティムが邪教集団の崇拝する怪獣と対決するという話。1996年にメディワークスから出たアンソロジー『ドラゴン殺し』のために書いた「密林の巨龍」と同じシリーズなんですけど、覚えてる人いますかね?
 時系列的にはこっちの事件の方が一年前という設定にしてます。(「密林の巨龍」ではティムは13歳、「廃都の怪神」では12歳)
 19年ぶりのシリーズ第2作ですよ。このシリーズ全部書けるのは、何年先になることやら。

 樋口真嗣さんの「怪獣二十六号」は、幻に終わった怪獣映画の企画。怪獣を番号で呼ぶなど、『MM9』と似てる設定ですが、実は『MM9』より前の企画なんだそうです。 大倉崇裕さんの「怪獣チェイサー」もやっぱり『MM9』っぽい世界観。僕は逆に、「山本弘だからどうせ『MM9』だろう」と予想する人がいるだろうから、わざとぜんぜん違う話にしました。
 もっとも「密林の巨龍」を読み直してみると、怪獣は白人文明の世界観とは異なる世界の存在なんで、その近くでは銃が使えなくなる……という、多重人間原理みたいな設定を使ってるんですよね。この頃から『MM9』っぽい発想してたんだな。

 KADOKAWA代表取締役専務の井上伸一郎さんの初の小説「聖獣戦記 白い影」は、元寇に怪獣がからむという歴史もの。ネタバレになるので詳しくは書けませんけど、クライマックスでみんな驚くはず。いやー、権利持ってる強みだなあ(笑)。
 実は昨年、お会いした時に、二人とも怪獣映画が好きなもんで、怪獣の話をさんざんしたんですよね。その時に、僕がぽろっと口にしたちょっとしたアイデアがあるんですが、後で井上さんに「あのアイデア使っていいですか」と言われて、「どうぞどうぞ」と返事しました。こんな見事な小説になるとは、感慨深いです。

 怪獣小説というジャンルはまだまだ可能性があって、アイデアしだいでもっといろんなバリエーションが生み出せると思うんですよ。現代日本にこだわることはない。前に『トワイライト・テールズ』で、アメリカやタイやコンゴを舞台にしましたけど、他にもいろんな国を舞台にしていいし、他の惑星や異世界を舞台にしてもいいはず。夢枕獏さんや宮部みゆきさんみたいに、時代ものにしてもいい。舞台の数だけ異なるドラマが描けるはずなんです。SFにもミステリにもホラーにもギャグにもラヴロマンスにもできる。
 他にも、僕はからんでませんけど、洋泉社から『日本怪獣侵略伝 ~ご当地怪獣異聞集~』という怪獣小説アンソロジーも出るそうで、期待してます。今年は怪獣小説の当たり年になるかも?
日本怪獣侵略伝 ~ご当地怪獣異聞集~
  
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2015年03月08日

クリプトムネジアの恐怖・3

 そこで先の筒井康隆氏の文章だ。実はあの文章には先がある。

> SFをはじめて書くきみが、やっと見つけたアイデア――そんなものは、とっくに、どこかのプロ作家が考えだし、書いてしまっているに、きまっているのだ。しかも、ずっとおもしろく、ずっとうまい文章で!
> よほど、ほかにない新しい、しかもすばらしいアイデアでないかぎり、アイデアひとつで勝負するのは、危険なのである。
──筒井康隆『SF教室』

 アイデアひとつで勝負してはいけない、と筒井氏は警告する。大事なのはアイデアではなく、そのアイデアから君がどんなテーマを語るかだと。(長文になるので、詳しくは『SF教室』を読んでほしい)
 中学時代の僕は、この言葉にものすごく感化された。

 筒井氏の言葉は、作家にとって絶望ではなく希望である。誰が最初にそのアイデアを思いついたかは重要ではない。極端な話、自分で思いついたアイデアでなくてもかまわない。他の人が考えたアイデアであっても、自分なりにそのテーマに真剣に取り組み、結果的に違う作品になればいいのだ。
 ウェルズの『タイムマシン』を思い出してみればいい。現代のSF作家の中にも、作中にタイムマシンを登場させる人は大勢いる。でも、それはウェルズの盗作じゃない。ストーリーが違っていれば別の作品だ。
 さらにタイムマシン自体も、ウェルズが世界で最初に思いついたのではない。1887年に、スペインの作家エンリケ・ガスパール・イ・リンバウが書いた『時間遡行者』という小説が最初だと言われている(ウェルズの『タイムマシン』は1895年の作)。
 実はウェルズはタイムマシンというアイデアを何度も書き直している。1888年、アマチュア時代に書かれた初期作品「時の探検家たち」は、田舎の村に引っ越してきた変人科学者がひそかに作っていたのが、実はタイムマシンだった……という話。タイムマシンというアイデアを提示しただけで終わってしまい、なんともつまらない。
「これではいかん。やはりタイムマシンというものを出すなら、遠い未来、それこそ地球の終わりまで行くような壮大な話にしなくてはいけない」
 おそらくウェルズはそう反省したのだろう。こうして書き上がったのが、僕らの知る『タイムマシン』だ。
 ウェルズがリンバウの作品を読んでいたのかどうかは分からない。何にせよ、今ではリンバウの名は忘れられ、『タイムマシン』といえばウェルズということになっている。それだけ『タイムマシン』は優れた作品だったということだ。

 僕はよく小説を料理にたとえる。アイデアというのは食材である。食材が同じであっても、それをどう調理するかで、ぜんぜん別の料理になる。
『地球移動作戦』の元ネタが『妖星ゴラス』だというのは公言してるけど、『神は沈黙せず』や『去年はいい年になるだろう』や『UFOはもう来ない』にしても、似たようなアイデアの話はすでにいくらでもある。
 アイデアを思いついても、それだけで勝負してはいけない。そのアイデアがすでに誰かに書かれているという前提で、自分ならどう調理するか、どんなテーマを語るか、どうすれば「自分の小説」になるかを考えるのが大切だ。
 それを僕は筒井康隆氏に教わった。

「走馬灯」や「ウラシマの帰還」の問題は、「午後の恐竜」や「遙かなるケンタウロス」とアイデアが同じという点じゃなく、先行作品を超えるものになっていないってことなんである。
 一方、久野四郎氏の「勇者の賞品」は違う。「遙かなるケンタウロス」とアイデアは同じであっても、描き方がまったく異なる。
 太陽系からさほど遠くないところに、自然に恵まれた地球型の美しい惑星がある。しかし、宇宙船がその星に近づくことは禁じられている。というのも、何世紀も前、その惑星を目指して出発した植民宇宙船があったからだ。光速よりもずっと遅いスピードで、今もその星に向かっている。乗員は冷凍睡眠の状態にあり、すでに超光速航法が実用化していて、多くの惑星に人類が進出していることを知らない。そこで未来の人々は、乗員に真実を知らせないことに決め、その惑星を手つかずのまま残し、彼らの賞品とすることにした……という話。
 しかもこの話はそこで終わらない。最後の方は、乗員に真実を隠すのは正しいことなのかどうか、というディスカッションに発展するのだ。これは「遙かなるケンタウロス」のアイデアを発展させた、まったく別の作品だ。
 今では忘れられた作品だけど、僕は好き。どこかで復刻してくれないものか。

 だから「午後の恐竜」も、何かいい調理法を思いついたら、ぜんぜん違う話になるんじゃないかな……と、何十年も前から考えてるんだけど、その調理法をまだ思いつかない。
  
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Posted by 山本弘 at 20:00Comments(17)SF作家の日常

2015年03月08日

クリプトムネジアの恐怖・2

 では、栗本氏は「午後の恐竜」を読んだことがなく、まったく偶然に同じアイデアを思いついたのだろうか?
 どうもそうではないらしい。
 というのも、「走馬灯」が収録された短編集『さらしなにっき』(ハヤカワ文庫・1994)で、作者自身がこんな解説を書いているのだ。

> こりゃまた短い。こんな短いものを書いていた時代っていうのもあったんだなあ。
> これはまた凄い発想ですね。**が最後に見る走馬灯! いったいどこからこういうアイディアを考えつくのかね、栗本は? 最近あまりこういうショートショートっぽい発想というのは思いつかないような気がするのだが。
> これも小松さんのショートショートを思わせるものもあるし、星新一さんっぽくもありますが、確かなんとなくこれに雰囲気の似た話、というよりもこれを思いついたきっかけになった話は、確か小松さん──あるいは豊田さんだったのかな──だと思うんだけど短篇で、鉄腕アトムが出てきて主人公に話しかけたと思ったらうしろにゴジラが──フィクションと現実がごっちゃになっちゃう、という話があったような気がします。あいまいな話で申し訳ないが。(後略)

 それは小松左京氏の「新趣向」ですね。豊田有恒氏の名前を出しているのは、豊田氏の短編「二次元のスタジオ」(豊田氏の虫プロ時代の体験談をフィクション化した話だが、オチは明らかに「新趣向」にインスパイアされている)の記憶がごっちゃになってるのかもしれない。
 つまり栗本氏は、「新趣向」を明らかに読んでいるのに、その記憶がかなり曖昧なのである。
 それどころか、栗本氏は自分の書いた作品の記憶すら曖昧だ。同じ短編集に収録された「ウラシマの帰還」(SFマガジン83年7月号)という短編の解説にはこうある。

> いまとなってはちと古めかしい感のある設定だな(笑)と思って読み進んでいたら、なるほどそれがオチだったのですね(笑)いやー忘れてるもんだ。
> まあ「ワープ航法」なんて概念そのものがいまや古めかしいっちゃ古めかしいですが、しかしおわりまで読むとなかなか哀切な話ではあります。確か栗本はこれによく似た話をもうひとつ書いた記憶がある。ええっと、何だったかなあ。「最後の方程式」をカンチガイしてるんだろうか。

 そう、栗本氏は11年前に自分がどんな話を書いたかすら覚えていない! まあ、あれほど多作な人だと、いちいち何を書いたかなんて記憶していられないのだろう。
 ちなみにこの「ウラシマの帰還」、亜光速宇宙船で130年間の恒星間飛行を成し遂げた宇宙飛行士が、地球に帰ってみると、彼らが出発した後でワープ航法が発見されていて、自分たちがやってきたことが無駄な努力だったことを知る……という話。これまたA・E・ヴァン・ヴォクトの「遙かなるケンタウロス」(SFマガジン60年7月号)や、久野四郎「勇者の賞品」(SFマガジン69年7月号)という先行作がある。栗本氏の世代のSFファンなら60年代に〈SFマガジン〉を読んでいたはずなので、「遙かなるケンタウロス」や「勇者の賞品」を目にしていてもおかしくはない。

 つまり栗本氏は偶然に「午後の恐竜」と同じアイデアを思いついたのではなく、「午後の恐竜」を読んでいて、それを忘れていたのではないだろうか? ただアイデアだけを漠然と覚えていて、自分が思いついたアイデアだと錯覚したのでは?
「最近あまりこういうショートショートっぽい発想というのは思いつかないような気がするのだが」というのも、自分の発想ではないことに薄々気がついていたようにも読める。

 こういう現象には精神医学の世界でちゃんと名前がある。潜在記憶=クリプトムネジア(Cryptomnesia)という。自分が読んだ本や耳にした音楽のことを忘れてしまうが、まったく頭の中から消えてしまったわけではなく、記憶の底に残っているのだ。後でその記憶がよみがえった時に、それがどこから来たのか分からない。自分の発想であるかのように勘違いしたりする。
 クリプトムネジアが注目を集めたのは、いわゆる「前世の記憶」に関してだ。
 1969年、ジェーン・エヴァンスという30歳の主婦が、6つもの前世を思い出したという例がある。そのうちのひとつは、ローマ時代の女性「リヴォニア」としての人生だった。その内容はきわめて歴史的に正確で、ただの主婦が想像で語れるようなものではなかった。
 しかし、じきにその理由が判明した。1947年に書かれた『生きている森』というローマ時代が舞台の小説のストーリーが、ジェーン・エヴァンスの語った「前世」とそっくりであることが判明したのだ。ジェーンの話の中に登場した人物の何人かは、小説の中の架空の人物だった。つまりジェーンはずっと前に『生きている森』を読んだが、それを忘れていた。だが、そのストーリーは記憶の底に残っていた。それがよみがえった時に、「前世の記憶」と思ってしまったのだ。
 他にも同様の例はいくつもある。「前世の記憶」なるものの多くは、その人が小説か何かで読んだストーリーを思い出し、自分が体験したことのように錯覚しているのだ。

 これは小説家にとって恐ろしいことである。読んだけど忘れてる小説、観たはずなのに忘れている映画やドラマなんて、いくらでもある。それらの潜在記憶が何かの拍子にひょいとよみがえった時に、自分が思いついたアイデアだと錯覚してしまうことはありえる。その気がなくても「盗作」をしてしまうかもしれないのだ。
 以前、『魔境のシャナナ』というマンガの原作を書いた。人気が出なくて打ち切りを食らったが(笑)、実はかなり先のエピソードまでプロットを書いていた。
 連載が終わって2年ぐらいしてからだろうか。そのプロットを読み返していて、突然、そのエピソードのうちのひとつが、『うしおととら』の時逆(ときさか)の話にそっくりだということに気がついた。
 やばい。連載が打ち切られなかったら、このエピソードが日の目を見ていて、誰かが類似に気がつき、「『うしとら』のパクリだ!」と騒がれていたかもしれない。

 こうしたことは、作家をやっていたら、嫌でも起こり得る。『うしおととら』の場合、まだストーリーを覚えていたから自分で気がついたけど、完全に潜在記憶と化していたら、気がつくこともできない。
 じゃあ、どうすればいい?
(つづく)
 
  
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Posted by 山本弘 at 19:17Comments(3)SF作家の日常

2015年03月08日

クリプトムネジアの恐怖・1

 今回は、大半の人にとっては「恐怖」じゃないかもしれないけど、作家にとっては恐怖の現象を紹介したい。それは「クリプトムネジア」。

 まず、これを読んでいただきたい。ネットで検索していて、偶然ヒットした、2013年のニュースである。

栗本薫の短編小説「走馬灯」がイタリアにて映画化
http://sfwj50.jp/news/2013/07/somato-kurimotokaoru-movie-italia.html

 この記事、不自然だとは思われないだろうか?
 日本のSF作家の作品が映像化されたというのに、なぜか、かんじんの「走馬灯」の内容についてまったく言及がないのだ。
 まあ、イタリア人が知らなかったのはしかたない。しかし、ストーリーを書いてしまうと、日本のSFファンならみんなピンとくるだろう。

「これってまるっきり、星新一の『午後の恐竜』じゃん」と。

 ちなみに「走馬灯」は『S-Fマガジン』1988年2月号掲載作品。当時、僕はリアルタイムで読んで、唖然となったもんである。 無論、アイデアが同じであっても、ストーリーが違っていれば別の作品だが、「走馬灯」はそのアイデアが提示された時点で終わってしまうので、「午後の恐竜」に何も新しいものをつけ加えていないのである。
 原稿を渡された編集者も困惑したんじゃないかと思う。いや、当時存命だった星新一氏はどう思っただろう?

 さすがに『SFマガジン』誌上で意識的に星新一のパクリをやるとは思えない。おそらく栗本氏は意識して盗作をやったのではないと思う。
 これには二つの解釈がある。ひとつは、栗本氏は「午後の恐竜を読んだことがなく、まったく偶然に同じアイデアを思いついたのだという考え。

 実はアマチュア時代、1980年代初頭だったと思うが、こんなことがあった。あるイベントの直後、数人のSFファンが駄弁っていた時、一人が「今度こういう話を書こうと思ってるんだ」と言って、自分の思いついたアイデアを披露したのである。
 まわりにいた、僕も含む全員が、「それ、星新一の『午後の恐竜』だよ」と指摘したら、そいつは「えっ、もう書かれてたの?」と驚いていた。
 つまり星新一氏でなくても思いつくアイデアだということだ。

 以前、小説講座をやっている人から聞いたんだけど、作家志望のアマチュアの人にショートショートを書かせたら、「主人公が実は虫だった」というオチを書いてくる人がやたらにいるのだそうだ。主人公の一人称による描写で話が進み、最後に実は主人公がゴキブリだったとか、蚊だったとか判明するのだ。
 思いついた人は「斬新なオチだ」と思ってるかもしれないけど、そんなのは誰でも思いつく程度のものなんである。

> SFをはじめて書くきみが、やっと見つけたアイデア――そんなものは、とっくに、どこかのプロ作家が考えだし、書いてしまっているに、きまっているのだ。しかも、ずっとおもしろく、ずっとうまい文章で!
──筒井康隆『SF教室』

 筒井康隆氏の『SF教室』は、僕が中学の時に学校の図書室で借りてむさぼるように読んだ、いわば僕にとってのSFのバイブルである。この本で得た知識は多い。
 長らく絶版で入手困難だったが、昨年、『筒井康隆コレクションⅠ 48億の妄想』(出版芸術社)に収録されたので、また読めるようになった。高い本だが、おすすめしておく。

 子供向けの本とはいえ、筒井氏の筆はまったく容赦なく、SFや創作について、あけすけに本音を書きまくってる。そのかっこよさ、今読んでもしびれる。
 特に秀逸だと思うのが、上記の「SFをはじめて書くきみが」なのである。
 身も蓋もない話だが、真理だと思う。

 特に僕らの世代には、上には星新一という巨人がいた。
 星さんがありとあらゆるオチを書いてしまっているから、何か思いついてもたいてい、「ああ、それ星さんのショートショートにあったよね」ということになっちゃうのだ。
 だからこそ、筒井さんの言葉が身に染みるのである。
(つづく)
  
タグ :創作SF


Posted by 山本弘 at 16:49Comments(5)SF作家の日常