2014年10月25日

ムー愛読者はと学会を経てネトウヨになる?

 ものすごくひどい文章を読んでしまった。

ムー愛読者はと学会を経てネトウヨになる?
http://togetter.com/li/721401

>最近は、ムー愛読者→と学会→ネトウヨというコースの中で、と学会の人気がないので、ムー愛読者→放射脳叩き→ネトウヨ がトレンド。

>ムー愛読者→と学会→ネトウヨが、保守本流。自民党でいえば、自由党系の宏池会と木曜倶楽部
>紺碧の艦隊とかの仮想戦記愛読者→陰謀論→ネトウヨ が、保守傍流。自民党でいえば、民主党系の清和会とか番町研

>昔からネトウヨと喧嘩しまくってたクラスタからは、3•11のあと、反原発になった人もいれば推進派も出た。しかし共通して、「放射脳を笑わない」「放射脳叩きにこそ警戒する」という立場だった。昔からネトウヨと喧嘩してた人が、「如何に、と学会がネトウヨインキュベーターか」を知ってたから。

>と学会系、スケプティック系、SF系オタクは視野が狭いのですぐ釣りに引っかかる。歴史問題でもある細かい事実が本当かどうかってことにしか関心がないから、すぐネトウヨ化する。

>山本弘や菊池誠や「と学会」の連中、Twitterその他に散在する反・反原発の連中にとっての反原発運動家というのは、たぶんネット右翼や在特会にとっての朝鮮人や中国人と全く同じような存在になっているんだろうね。「反原発運動家」が日本を支配しているとのトンデモ認識に陥っているんだろう。


 えー、ものすごくツッコミどころだらけで、いったいどこからツッコんでいいやら(笑)。でも、こういうデマはきっぱり否定しとかなきゃいけないだろうな。
 まず基本的なことから。僕はもう半年近く前、と学会辞めてます。まあ、そのへんは単なる情報不足だろうからいいとして。

「ムー愛読者→と学会」とか「と学会→ネトウヨ」なんて流れは聞いたことがない。いや、中には稀にそういう人もいるかもしれないけど、決して「トレンド」「本流」なんかじゃない。

・そもそも僕は『トンデモ本の世界R』で『戦争論』を批判したことで、2ちゃんねるとかではサヨクとみなされているのだが(笑)。(バランスを取るために、左翼系のトンデモ本『買ってはいけない』と並べたんだけど、そういう配慮には気がついてもらえなかった)

・これも前から何度も公言しているが、僕は反原発派である。原発はこれ以上増やすべきではないし、時間をかけて代替エネルギーに転換していかなくてはならないと思っている。

・しかし同時に、差別に対して強い嫌悪も抱いている。だから福島差別を助長し、福島の人たちに迷惑をかけている放射能デマは絶対に許せない。

「放射脳を笑わない」というのもおかしい。誰であれ、あまりにも間違ったことを主張したら、笑われるのは当たり前だ。間違ったことを擁護するのは間違いだ。繰り返すが、放射能デマというのは差別デマであることを認識すべきである。

・2013年の『タブーすぎるトンデモ本の世界』でも、僕は在特会を批判し、嫌韓レイシストたちのデマの数々をあげつらっている。その一方で、いわゆる「放射脳」の人たちのデマも取り上げて、「嫌韓と放射能は似ている」と論じている。

・僕以外の著者も同じで、個々の原稿は右寄りだったり左寄りだったりもするが、全体としてどっちの思想にも肩入れしていないはずである。だから「と学会→ネトウヨ」なんてのは事実無根だ。

・そもそもと学会というのは、本職の占い師も神主も科学者も朝日新聞の記者もいて、思想なんかばらばら。全体としてのイデオロギーなんかない。だから「と学会」とひとくくりにして論じること自体が間違いだ。

「ムー愛読者→放射脳叩き」というのは、もっと分からない。「放射脳」というのは科学や統計を無視して放射能を恐れる人たちであり、当然、それを批判しているのは科学や統計を重視する人たち。でも『ムー』愛読者って、まともな科学から最も遠いところにいるんじゃないのか?

「紺碧の艦隊とかの仮想戦記愛読者→陰謀論」というのも無理がある。確かに『紺碧の艦隊』は陰謀論だけど、仮想戦記のすべてがそうじゃないでしょ?

「「反原発運動家」が日本を支配しているとのトンデモ認識に陥っている」者なんてどこにいるんだろう? むしろ反原発運動は今の日本ではマイナーで肩身が狭くなっているというのは、多くの人の共通認識ではないのかな?

・なぜ肩身が狭くなったかというと、「放射脳」の人たちがあまりにもアホな主張をばらまきまくったせい、というのが僕の印象。だからこそ、反原発運動は「放射脳」を排除しなくてはいけないと思っている。放射能デマは福島の人を苦しめるだけでなく、反原発運動にとっても有害だから。

「と学会系、スケプティック系、SF系オタクは視野が狭い」というのも、ひどい差別意識だ。「細かい事実が本当かどうかってことにしか関心がないから、すぐネトウヨ化する」というのも、どういう論理なんだ? さっぱり分からん。

・これではまるで「細かい事実が本当かどうか」気にするのが悪いことのようである。もちろん、気にした方がいいに決まっている。むしろ事実がどうなのか確認しようとしない者こそ、嫌韓デマにひっかかるんじゃないのか?

 今回、このtogetterで僕がショックを受けたのは、「レイシストをしばき隊」を結成した野間易通氏がkdxだったと知ったことである。恥ずかしながら、これ読むまで知らなかったのだ。著書は読んだことあるのに。
 いやー、『「在日特権」の虚構』(河出書房新社)はけっこう面白い本だと思ったんだけどねえ。正体がkdxだと知って印象が変わっちゃったわ(笑)。

 kdxは2009年ごろにmixiの「懐疑論者の集い-反疑似科学同盟」コミュに現われた。しょっちゅう他人の揚げ足ばかり取っていて、すごくうざかったのを覚えている。本当にどうでもいいことに難癖つけたり嘲笑したりするのだ。僕も何度もからまれた。
 それも誰かが発言すると、数分とか十数分のタイムラグですかさずレスをつけてくるんである。昼も夜も。mixiに四六時中貼りついて、こまめに発言をチェックしているとしか思えない。本人は「自由業」だと主張してたけど、mixiに貼りついていられる自由業って何だよ(笑)。
 その後、僕は嫌になって、「懐疑論者の集い」コミュからしばらく離れていた。何か発言するたびにkdxがいちいちしょうもないいちゃもんをつけてくるのが、鬱陶しくてしかたなかったからだ。

 で、僕が何がいちばんショックだったかって、彼の「と学会系、スケプティック系、SF系オタクは視野が狭い」「すぐネトウヨ化する」という発言である。
 あれだけ「懐疑論者の集い」コミュで頻繁に発言していたのに、彼は結局、僕のことも、と学会のことも、懐疑主義という概念も、まったく理解していなかったのだ。 おそらく最初から懐疑論者やオタクに対して嫌悪を抱いていて、けなしたくて乗りこんできただけだったんだろう。
 彼の頭の中では、「放射能デマを叩く者=ネトウヨ」という単純な図式なんだろう。僕みたいに、反原発で反差別でありながら、放射能デマを叩くというスタンスが理解できないんだろう。
 彼は在特会と戦っていながら、自分自身が差別意識を持っていることを認識していないように思える。

 繰り返す。間違ったことを主張したら、批判されたり笑われたりするのは当たり前だ。右だろうと左だろうと。
 だから僕は、レイシストが流す嫌韓デマも叩くけど、こういうデマも叩くよ。これからも。
  

Posted by 山本弘 at 16:58Comments(0)トンデモ差別問題

2014年10月25日

ライトノベルをめぐる仮説いろいろ

 最近、togetterで取り上げられた話題を中心に。

●最近の男性向けラノベに女性主人公が少ない理由
http://togetter.com/li/728375

 コメント欄ではこんな意見がある。

>男性と女性はなんだかんだいって思考回路が大きく異る。ので文章で全部想像しないといけないラノベでは女性心理を完全にシュミレート出来る能力が必要になる

 いや、その仮説だと、過去に『スレイヤーズ!』『ARIEL』『ヤマモト・ヨーコ』などなど、男性作者が書いた女性が主人公の作品がヒットした理由が説明つかないよね?
 あと、女性でないと女性の心理が描けないというのであれば、同じ理屈で、「宇宙飛行した経験がないと宇宙飛行士の心理は描けない」とか「人を殺した経験がないと殺人者の心理は描けない」とか「美少女にモテまくった経験がないとハーレムものの主人公の心理は描けない」ということになってしまうんだけど、誰もそんなことは言わないはずだ。
 無論、ここ数年のライトノベルに限って言えば、「非常識なヒロインに振り回される男性の語り手」というパターンが多いのは確かだ。その理由? 単純だよ。

『涼宮ハルヒの憂鬱』が大ヒットしたから。

 あれがスタンダードになって、後続の作家が影響を受け、同じようなパターンの作品を書くことが多くなった。さらにそれがジャンルの中の多くを占めるようになり、「ライトノベルとはこういうもの」という誤った固定観念が一部に生まれてしまった。
 まあ、僕も『プロジェクトぴあの』でやったけど、突拍子もない言動をするヒロインを描くのに、ストレートに描写するより、別に語り手を配置して、その視点からワンクッション置いて語る方が、何かと描きやすいのは確かだ。 ヒロインの内面をあえて描かないことで、「こいつ、何考えてんだ?」という驚きを表現できるのである。
 でも、それはあくまで執筆上の手法のひとつにすぎないんであって、普遍的な法則でも、遵守すべき規則でも、ヒットするための条件でもない。
 僕も『ギャラクシー・トリッパー美葉』とか『神は沈黙せず』とか『アイの物語』に収録された作品群とか、女性主人公の一人称の作品を何本も描いている。それが不自然なことだとは思わない。
 だからライトノベル作家が普通に女の子を主人公にしたり、女の子の視点から物語を語りたければ、そうすればいいだけのことだ。自分の頭の中に勝手に規則を作って縛られる必要なんかない。

●【チート?】俺TUEEEじゃない異世界モノ作品【ラノベ】
http://togetter.com/li/727172

>異世界物ラノベというと、とかくチート能力とか俺TUEEEとかが目に付きますが、そういう主人公でない作品って無いかな?から始まりました。
>平凡で普通な主人公がちゃんと頑張る話ってないかなあ。

『サーラの冒険』は?(笑)

 そもそも僕が何で『サーラ』を書いたかというと、当時の異世界ファンタジーというと、主人公がすごい力を持ってたり、王族の血を引いてたり、世界の命運を背負ってたり、巨大な悪と戦ってたりといった話が多くて、それに反発を覚えたからなんだよね。
 特殊能力を持っていなくても、剣が強くなくても、高貴な血でなくてもいい。悪の大魔王と戦ってなくてもいい。ごく普通の少年が精いっぱいがんばって、ちょっとした冒険をする。そんな話があってもいいんじゃないか……と思ったんである。
 で、当たったよ。つーか、僕の小説で、発行部数で『サーラ』を超えるものが未だにないんだよ(笑)。
 誤解を招かないように言っておくけど、僕は「チート能力とか俺TUEEEとか」系の話を否定しない。作者がそういう話を書きたいなら、いくらでも書けばいい。

 要はそれが面白いか面白くないかだ。

 面白いか面白くないかは、当たるか当たらないかは、ジャンルや話のパターンで決まるわけじゃない。個々の作品の出来不出来による。おそらく「俺TUEEE」系の話でも、つまらない話はいっぱいあると思う。 『サーラ』みたいな話でも、下手な作家が書いたら退屈な作品になっていたはずだ。

●ラノベ新人賞で「まるでシリーズ第一巻の様な投稿作品」が過半数を占めているという悩み
http://togetter.com/li/716859

 これも前の話と同じで、既成のライトノベルをいろいろ読んだ結果、「ライトノベルというのはこういうもの」という固定観念にとらわれてるんだろうな。
 シリーズものを書きたいと思う気持ちは分かる。でも、そのためには、まず新人賞を受賞してデビューしなくてはならず、そのためには応募作はきちんと完結していなくてはならない……という基本的なことが理解できてないというのは、やっぱりダメだと思う。

 ダメなのは、「ライトノベルとはこういうものだから、こう書かなくてはいけないんだ」とか「今はこういうパターンの話が受けてるんだから、こういう話を書こう」という考え方だ。
 自分が本気でその話を面白いと思って書くのと、「他の人がこう書いてるから」とか「こう書けば受けるだろう」とかいう考えで書くのは、似てるようでぜんぜん違う。
 分かりやすく言うと、『スター・ウォーズ』が大ヒットしてるからと言って、『惑星大戦争』や『宇宙の七人』や『スタークラッシュ』を作っても当たるとは限らないよ、ということ(笑)。
 いや、個人的には好きなんだけどね、『スタークラッシュ』。あれは映画としてはダメダメだけど、監督が自分の好きなものを自由に作ってるのが分かるから。結果的に当たらなかったけど、好感は持てる。

結論:
 枠にとらわれるな。当たるかどうかなんて気にするな。
 何が当たるかなんて、どうせ誰にも分からない。作家にできるのは、当たる確率を上げるために、少しでもいい作品を書くこと、それしかない。
 どんな作品でもいい。とにかく自分の好きなもの、自分が面白いと思うものを全力で書け。
  

Posted by 山本弘 at 16:32Comments(0)ライトノベル作家の日常

2014年10月25日

『SHIROBAKO』2話が神回だった

 今期のアニメ、『ログ・ホライズン』二期と『ビルドファイターズトライ』はどちらも前作からの安定した面白さで楽しめるし、作画の美しさでは『神撃のバハムート』、ギャグでは『繰繰れ! コックリさん』が一番かと思う。
 しかし、個人的にイチオシしたいアニメは『SHIROBAKO』だ。

http://shirobako-anime.com/

 TVアニメ『えくそだすっ!』を制作しているプロダクションが舞台。これまで、アニメの世界を描いたアニメはいくつかあったけど、この番組はとにかくリアリティが素晴らしい。
 もちろん現実そのままじゃなく、いろいろアレンジされてはいるんだろうけど、「ああ、実際にこうやって作ってるんだろうな」とか「番組の裏側ではこういうトラブルもあるんだろうな」とか納得させられるんである。
 第一話からすでに、原画マンが逃げたり作画監督が倒れたり(もちろんアニメの中でですよ。念のため)というピンチの連続で、スケジュールがかなり苦しくなってきており、『えくそだすっ!』がちゃんと最後まで放映できるか危うい状況。それでも制作進行のヒロイン・あおいやスタッフたちのがんばりで危機を乗りきってゆく。まさに綱渡りで、そんじょそこらのバトルアニメやサスペンスアニメよりはらはらさせられる(笑)。

 特に先日放映された2話『あるぴんはいます!』にはノックアウトされた。
 まず、Aパートのアフレコのシーンがいい。あるぴん役の声優・茅菜夢衣役の茅野愛衣(ややこしいな)の演技にも感心するけど、BGMを「感情につける」「シチュエーションにつける」という意味がすごくよく分かる。
 そこからが大変。アフレコに立ち会った監督が、あるぴんの解釈が違うと言い出し、彼女の過去の設定(それも最初からあったんじゃなく、今思いついたばかりの)を語りだして、ついにはスケジュールがせっぱ詰まっているにもかかわらず、作画リテイクを言い出す。
 ここの檜山修之の演技がまたいいんだわ。昔は勇者王だったのに、最近は三枚目も板についていて、この回でも「いてよーし! みたいな」とか「お姉さんだったわけだー」というあたりがおかしくて、何度も聴き直しちゃったよ。
 この監督、以前に別のアニメでスケジュールを崩壊させた前科があり(あるあるこういう話!)、おかげで自分の演出回が「伝説の作画崩壊回」になってしまった演出家が、今でもそのことを根に持っている……という、アニメ関係者なら胃が痛くなりそうな状況。
 Bパートでは、監督の主張をめぐって、スタッフ全員が集まり、ディスカッションを繰り広げる。このくだり、ほとんど狭い室内だけで展開する会話劇で、アクションなんかないにもかかわらず、見ていてぐいぐい引きこまれる。しかも熱くシリアスに口論している内容が、美少女キャラクターの表現や設定についてなんだから、その落差がたまらない。
 冷静に一歩引いて考えると、何でそんなことで大の大人たちが激論してるんだよとツッコミたくなるんだけど、素人には「どうでもいいこと」に思える部分にこだわるのがプロというものなんだろうな。
 しかも、リアルなだけじゃなく、あおいのピントのずれた発言から、話が思いがけない方向に転がっていって、最後にアニメならではのファンタスティックな表現が炸裂する。このドアホウな展開(褒め言葉)には、深夜にもかかわらず笑い転げた。「『ミスター味っ子』かよ!?」と。
 個人的に、この回は神回認定したい。
 ちなみにアフレコの後で絵の方を直すというのは実際にも稀にあることらしい。『カレイドスター』5話で、そらが空港で泣くシーン、広橋涼が演技を超えてマジ泣きしてるもんで、佐藤順一監督がそれに合わせて絵の方を描き変えるよう指示したという。たぶんそのへんがヒントになってるんじゃないだろうか。(実際、すごい出来だったよ、あのシーン)

 リアルすぎるアニメって、ちょくちょく「これって実写でやってもいいんじゃない?」と疑問に思ってしまうことがあるんだが、この『SHIROBAKO』はまさにアニメであることに意味がある。アニメを愛する人間なら見て損はない。
 なお、ニコニコ動画で公式配信されてるので、見逃した人も今からでも追いかけられる。

http://www.nicovideo.jp/watch/1412927306

 ちなみに、関西では今夜(10月25日深夜)、第3話の放送。ネットでの評判はいいので楽しみである。でも、 「総集編はもういやだ」ってサブタイトルがすごく不吉なんだけど(笑)。
  

Posted by 山本弘 at 16:00Comments(0)アニメ

2014年10月11日

懐かしプラモのちょっといい話#2

山本弘のSF秘密基地LIVE#39
懐かしプラモのちょっといい話#2

 1980年代、子供たちの世界を席巻したガンプラ・ブーム。『ガンダム』だけではなく、多くのキャラクターのプラモデルが発売された時代でした。プラモ評論家の鋼鉄サンボ氏とともに、当時の資料を基に、あの時代を振り返ります。
 前回は1980年と81年の話題でしたが、今回は82年以降の話題。『ガンダム』だけでなく、『マクロス』『バイファム』『ザブングル』などなど、当時の他のロボットアニメのキットについても語ります。お楽しみに!


[出演] 山本弘(SF作家)、鋼鉄サンボ(プラモ評論家)

[日時] 2014年10月31日(金) 開場・19:00 開始・19:30

[会場] なんば紅鶴(大阪市中央区千日前2-3-9 レジャービル味園2F / Tel. 06-6643-5159)(地図)南海なんば駅より南海通り東へ180m・駐車場有

[料金] 1500円
(店内でのご飲食には別途料金がかかります。入場時に別途ワンドリンクをご購入いただきますのでご了承ください)


 前売り券のお求めはこちらへ。
http://boutreview.shop-pro.jp/?pid=80568260
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 サンボくんが貯めこんだ大量の資料(特にガンプラの組み立て説明書と当時の模型雑誌)をスクリーンに映しながら、ガンプラを中心に、80年代のキャラクタープラモ全般を語る……という企画なんですが、前回は2時間かけて、80年と81年だけで終わっちゃいました(笑)。何しろ語るべきことが山ほどあるもんで。
 今回、サンボくんから貰った資料を見て痛感したのが、30年以上経って、記憶がかなり薄れてきてるということ。特にどのキットが何年ごろに出たか、その順序がまったく記憶と違ってるんですよ。
 たとえば、最初に1/144ガンダムと1/144シャアザクがほぼ同時に出たように記憶してたんだけど、資料を見て分かったのは、1/100ガンダムと1/144ガンダムの次に出たのは、1/1200ムサイでした。
 今から考えると「なぜそこでムサイ?」という気がするけど、サンボくんの解説によると──

・当時、主人公メカがプラモデルになることはよくあったが、敵のロボットがキット化されることはめったになかった。まして、赤い一つ目の変なロボット(笑)が売れるかどうかなんて、当時のバンダイの人たちにはまったく予想がつかなかった。
・ただ、その前に『ヤマト』のシリーズがヒットしていて、ガミラス艦などもキット化されていた。しかも『スター・ウォーズ』などのブームもあったから、とりあえず安全牌として宇宙船のキットを出すというのは、当時としては妥当な判断だった。それでムサイが選ばれた。
・しかし、シャアザクが爆発的に売れたもので、その後はMSが主流になった。

 なるほど。今の常識と当時の常識は違いますからね。歴史を振り返る際には、当時の人の常識も理解していないといけないわけです。
 あと、当時の常識というと、やはりガンプラ・ブーム。あの頃、ガンプラがどれほど売れたか、子供たちがどれほど熱狂したか、あの時代を知らない人には分からないんじゃないかという気がします。「ガンプラをカツ上げされる子供がいた」とか「買うのに整理券が必要だった」とか「売れないキットを抱き合わせで売る模型店があって、社会問題になった」とか、今では信じられない人もいるかも。
 で、当然僕もいろいろ買ったんだけど、今となっては何を買ったかという記憶も曖昧で(笑)。Gアーマーとかゾックとかは確かに買った記憶があるけど、作った記憶がないんで、もしかしたら積んでおいただけだったのかも?
 で、組み立て説明書というのが、記憶をよみがえらせるのに、意外に役に立つんですよ。アッガイの爪の構造を見て、「このギミック、確かに作った記憶ある!」とか。

 ちなみに今回は『プラモ狂四郎』とかの話題にも触れる予定。当時、このマンガには熱狂したもんであります。当然、糸ハンダ買いました(笑)。
 今はもちろん『ビルドファイターズトライ』も観てます。


   

Posted by 山本弘 at 18:39Comments(9)PR

2014年10月06日

映画『赤×ピンク』



>東京・六本木、廃校になった小学校で毎夜繰り広げられる非合法の格闘技ショー“ガールズブラッド"。
>ここは、思い思いの衣装でコスプレした女達が肌をむき出しにぶつかり合う会員制の地下ファイトクラブ。
>性同一性障害に悩む空手家・皐月は、ある日ガールズブラッドにやって来た美しい人妻、千夏と恋に落ちる。
>だが、幸せな日々を過ごす2人の前に千夏のDV夫が凶暴な仲間たちと共に現れ、千夏を強引に連れ戻そうと画策、
>ガールズブラッドの存亡の危機にまで発展する。
>皐月は千夏とガールズブラッドを取り戻すため、仲間と共に立ち向かうのだが…。

 今年の2月に公開された映画。劇場では観そこねたんたけど、この間、角川の人からDVD-BOXをいただいたんで観ることができました。ありがとうございます。
『戦隊』シリーズ、『ライダー』シリーズ、それに『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE』などを手がけてきた坂本浩一監督だから、アクション・シーンがよくできてるであろうことは最初から疑ってなかったんだけど、アクション以外の部分はどうなんだろうなあ……と思いながら見てみた。
 うん、いいじゃない。

 要約すると、『ロッキー』+『カリフォルニア・ドールズ』。 もちろん『ファイト・クラブ』も入ってるけど。
 もうね、最初から最後までバトルばっかり! リングの上だけじゃなく、屋外や室内でのバトルもいろいろあって飽きさせない。

 でもって、バトルの合間にはエロ!

 シャワーシーンとかレズシーンとか何度も何度も出てくるの。主演の芳賀優里亜(『仮面ライダー555』の園田真理)なんか、登場していきなり脱いでるうえに、おっぱいだけじゃなくヘアまで堂々と見せてレズシーンを熱演してますよ。
 もうね、どんだけサービス精神旺盛な映画だよと。
(ちなみに僕が観たのはディレクターズ・カット版。劇場公開版だと少し削られてたみたい)

 とまあ、こう書いていくとアンディ・シダリスかフレッド・オーレン・レイ作品みたいなものを連想されるかもしれないが(笑)、 さすが坂本監督、アクションがスピーディで見ごたえがある。短いカット割りと緩急の使い分けでかっこよく見せるのは、やはり長年積み重ねてきたノウハウだろうな。
 でもって、女優さんたちがみんな体張ってんだわ。主役の芳賀優里亜と多田あさみの対決もすごいけど、水崎綾女(『ゴーバスターズ』のエスケイプ)とかもいい動きするんだよ。最後のハイキックなんて、ため息出るよ。みんなこの映画のために、かなり練習したんだろうな。その裏の苦労を想像すると頭が下がる。

 ああ、そうか。これ、僕が好きな「バカなことに全力を傾ける話」なんだ。
 舞台となる〈ガールズブラッド〉も、何でこんな危険なことをお前ら進んでやってるんだよと、冷静に考えるとツッコミたくなるし、この映画自体、「女の子がエロいことしながら戦ったら面白いんじゃね?」という、あからさまな下心で作られてるのが見え見えなんだけど、それを単なる下心で終わらせず、全力で大真面目にやってるところに感心するのだ。

 ストーリー的には、クライマックスの展開が明らかに無理があって、もうちょっと工夫が欲しいなとは思ったんだけど(原作は読んでないけど、このへんは映画オリジナルらしい)、観てて燃えることは確か。
 やっぱり「拳と拳で分かり合う」というのをやりたかったんだろうな。

 というわけで、「美女が戦うエロい映画」を求めている人には、絶対おすすめ。
  

Posted by 山本弘 at 12:14Comments(2)最近観た映画・DVD

2014年10月06日

人形劇版『伊賀の影丸』



 横山光輝の名作『伊賀の影丸』が、1963~1964年、人形劇としてテレビで放映されていたのをご存知だろうか。
 今なら雑誌連載の人気マンガはアニメになることがよくあるが、1963年というのは『鉄腕アトム』や『エイトマン』が放映開始された年。まだ「人気があるからアニメ化」という発想は一般的ではなく、むしろ実写ドラマや人形劇になる例が多かった。(『鉄腕アトム』もアニメ版の前に、実写ドラマ版や人形劇版があった)
 だから当時の子供たちに大人気だった『伊賀の影丸』も、人形劇になった。そのうち10話分のフィルムが奇跡的に残っていて、このたびソフト化されたのである。
 僕はぎりぎり本放送を観ていた世代なんだけど、幼かったので、内容についての記憶がほとんどない。「影~」「はっ!」「影~」「はっ!」という主題歌だけは覚えてたんだけど。
 だもんで、はたして今観て面白いのかどうか、自信がまったく持てなかった。買ったのはいいけど、しょぼかったどうしよう……と、ドキドキしてたんである。

 しかし、観てみたらほっとした。
 面白いわ、これ!
 人形劇であることが、途中からぜんぜん気にならなくなってくるのだ。

 今回、ソフト化されたのは第2部、原作の「由比正雪」編を30分×10話に映像化したもの。鈴ヶ森の刑場で処刑されたと思われていた由比正雪が実は生きていたことが判明。服部半蔵から密命を受けた影丸ら伊賀忍者たちが、東海道を西に向かう正雪一味を追跡する……というストーリー。
 かなり自由に脚色されており、オリジナル・キャラクターが何人も出てくるし、原作にないエピソードも挿入される。 しかし、水増し感はまったくない。毎回、展開が速く、30分の中に何回もバトルが出てきて、飽きさせないのだ。
 特に上手いと思ったのは、盲目の美少年忍者・左近丸をクローズアップしてること。目が見えないので敵忍者の幻術にかからない。原作では途中であっさり死ぬのだが(『影丸』では毎回、影丸以外の忍者はほぼ全員死ぬ)、この人形劇版では最初から最後まで活躍。生き別れの妹が隠れキリシタンで、しかも由比正雪に味方していて……というドラマが展開する。これはテレビ化するにあたって納得できる範囲のアレンジだろう。
 かと言ってそのへんの人間関係がストーリー展開を阻害するわけでもなく、適度なスパイスになっている。

 人形劇で戦闘シーンというと、普通に撮ったら、ただ単に人形がぶつかり合っているだけのつまらないものになってしまうだろうけど、短いカットの組み合わせで、いろいろ工夫が凝らされている。
 たとえば第1話で、正雪の部下の金井半兵衛が、関所の役人3人を一瞬で斬り殺すシーンが秀逸。斬る瞬間を見せることなく、半兵衛の強さを印象づける。うむ、これはかっこいい。
 人形は下から操るギニョール方式なんだけど、戦闘シーンでは、テグスで吊られてびゅんびゅんと飛ぶ。
 忍者ものの定番、手裏剣が樹にタタタッと刺さるシーンも何回も出てくる。おそらく手裏剣にテグスがついていて、あらかじめ樹に刺しておいたおいたのを、テグスを勢いよく引いて抜き取り、それをフィルムの逆回転で見せてるんだと思う。
 原作に出てくる忍法は、弥九郎の影ぬい、太郎坊の分身の術、獅子丸の獣を操る術などは、ほぼ忠実に再現されている(太郎坊はこのために同じ人形を何体も作っている)。一方、左近丸のくも糸わたり、鏡月の水鏡などは、人形劇で再現するのは無理があったらしく、省略されたり、別の術に変えられている。藤太の糸うらないがカルタ(タロット)うらないに変えられているのも、テレビでは糸が見えにくいからだろう。
 さて、影丸と言えばもちろん、忍法・木の葉隠れ。第4話で披露するんだけど、これがなんとアニメ合成! 渦を巻く木の葉がアニメで描かれているのだ。これには感心した。この時代にこんなこと、やってたんだ。

 製作したのは、この翌年、『ひょっこりひょうたん島』を手がける人形劇団ひとみ座。
 演出は長浜忠夫。
 そう、あの長浜忠夫!
 この頃、人形劇の演出をやってたんである。
 ちなみに、ひとみ座でこの『伊賀の影丸』を製作した藤岡豊氏が、この翌年に東京ムービーを設立。長浜氏も藤岡氏の人脈で、アニメ演出の道に転進したのである。

 影丸の声は藤田淑子。ただ最初、藤田淑子だと分からなかった。僕らが知ってるジェリーや一休さんの声より、さらに幼い声だったから。
 調べてみたら、この年、藤田淑子13歳! 中学生で声優やってたんだ!? どうもこの『伊賀の影丸』で認められて、翌年『トムとジェリー』に起用されたらしい。
 いろいろとアニメ界に影響与えてたんだな、『伊賀の影丸』。

 声優と言えば、OPの「声の出演」には若山弦蔵や愛川欽也の名もクレジットされている。しかし、いくら聴いても若山弦蔵の声で喋ってるキャラクターがいない。
 その一方、アンナという女性キャラの声はどう聴いても小原乃梨子なんだけど、OPにクレジットされていない。
 これは推測だけど、このOPクレジット、第一部のそれを流用してるんじゃないだろうか? 第二部になって出演者が変わったのに、そのままになってるのでは?
 白黒の『鉄腕アトム』とかを見れば分かるけど、この頃の子供向け番組は、その回のスタッフ・キャスト名は、EDにテロップで表示されるのが普通だった。もちろんそれは本放送時のみで、再放送やソフトではテロップなしの映像だけが流れる。この『伊賀の影丸』でもそうである。
 資料が散逸していると、映像は残っていても、演出家や脚本家や出演声優の名前が分からないという例がざらにあるのだ。

 何にせよ、こういう「子供向けヒーロー番組のオーパーツ」みたい作品を見ることができたのは嬉しい。
  

Posted by 山本弘 at 11:58Comments(1)最近観た映画・DVD

2014年10月06日

原田実『江戸しぐさの正体 教育をむしばむ偽りの伝統』(星海社新書)



 これも著者の原田氏よりの献本。ありがとうございます。

 公共広告機構のCMで使われ、最近では学校教育や社員研修でも使われるようになっている「江戸しぐさ」。 原田氏はそれがいかに歴史的にデタラメかというだけでなく、それがどうして生まれ、拡散していったかを検証している。
「江戸しぐさ」の中には、ちょっと考えるだけで「おかしい」と分かるものがある。電話のなかった時代なのにアポなし訪問がマナー違反だとされていたり(どうやってアポ取るんだ)、腕時計のなかった時代に約束の時間の5分前に到着するのがマナーだったとか(どうやって知るんだ、その「5分前」を)。
 他にも、江戸の庶民がかき氷やバナナやチョコレート入りパンを食べていたという、歴史に詳しくない人間でも「そりゃありえないだろ!」とツッコミたくなる記述が多数。
 しかも、それがなぜ後世に伝わらなかったかというと、明治政府が「江戸っ子狩り」を行なって江戸っ子を大虐殺したからだという(笑)。

 こんなバカ話でも、少数の人間が信じているだけなら実害はない。しかし、教師の中にも信じる者がいて、事実として学校で子供たちに教えられているというのだから、笑いごとでは済まされない。

【実例】
http://www.tos-land.net/teaching_plan/contents/10653
http://www.tos-land.net/teaching_plan/contents/16668

 知れば知るほど、水伝(『水からの伝言』)との共通点を感じる。あれも、どう考えてもありえない話が、「いい話だから」という理由で教育者に信じられ、一部の学校で道徳教育に取り入れられたのだった。
 個々のマナー自体は、確かにいいことを言っている。でも、だったら普通に「傘のしずくが横の人にかからないように気をつけましょう」とか「電車では席を詰めましょう」とか、マナーを教えればいいだけのことではないか。歴史的にデタラメなことを子供に教える必然性がどこにあるのだろう。
 僕は以前、『ニセ科学を10倍楽しむ本』の中で、水伝についてこう書いた。


パパ「道徳も大事ですけど、学校の先生の仕事は、子供に正しいことを教えることではないのですか? 事実ではないことを事実のように子供に教えるなんてことが、あっていいはずがありません。
 たとえばイソップ童話の『ウサギとカメ』のお話をして、『なまけているとほかの人に追い抜かれるかもしれませんよ』とか、『たとえ歩みはのろくても、努力を続ければ最後には勝つんですよ』と教えるのはかまいません。童話というのはただのお話で、事実じゃないことは、子供でもわかりますからね。
 でも、『ウサギとカメが競走したらカメが勝ちます。これは科学的事実です』と教えたらだめでしょう? だって、本当に競走したら、カメは絶対にウサギに勝てませんよ(笑)」
先生「それはたしかに……」
パパ「道徳を教えるなら、それこそ童話や小説でもいいじゃないですか。事実ではないものを事実だと言う必要が、どこにあるんですか? 『道徳のためならウソを教えてもいい』なんて考え方は、それこそ道徳的じゃないでしょう?(後略)

 この文章はそっくりそのまま、「江戸しぐさ」にも当てはまる。
  

Posted by 山本弘 at 10:54Comments(19)トンデモ最近読んだ本

2014年10月06日

『これが基本だ!リージョン・オブ・スーパーヒーローズ』

アメコミ情報誌SleepWalker#18
『これが基本だ!リージョン・オブ・スーパーヒーローズ』(アメコミ向上委員会)

 SF大会で買った同人誌。アメコミ向上委員会の同人誌はよく買ってるけど、資料的価値は高い。特に昔のアメコミのプロット、現在までつながる設定のルーツを紹介してくれていて、いろいろ勉強になる。
 今回はDCのヒーロー・チーム、リージョン・オブ・スーパーヒーローズの話。1958年の『ADVENTURE COMICS』247号の初登場時のエピソード(最初は『スーパーボーイ』のゲストキャラだった)から、63年までの軌跡を追っている。
 記念すべき初登場時のエピソードのライターは、『ロボット市民』で知られるSF作家のイアンド・ビンダー。途中、いくつかの回では、スーパーマンの生みの親であるジェリー・シーガル自身が書いている。
 そして『ADVENTURE COMICS』306~308号のライターは、あのエドモンド・ハミルトン!
 ハミルトンがアメコミのシナリオを300編以上書いていたのは知っていたが、どんな話を書いていたか初めて知った。
 リージョン・オブ・スーパーヒーローズに入れてもらえなかった落ちこぼれのヒーローたちが、補欠チーム「リージョン・オブ・サブスティチュート・ヒーローズ」を結成して、本家リージョンの裏で活躍するという話。
 リージョンに新たに加入した謎のヒーロー、ミステリー・ラッド。仲間たちにも秘密にしているその能力とは何なのか……という話。
 死んだと思われていたライトニング・ラッドが復活したと思われたが、実は……という話。
 どれも設定の隙間をうまく突いてきたな、という印象。何せ30世紀のヒーローチームで、活躍の場の多くは宇宙だから、スペースオペラ作家ハミルトンの面目躍如という感じがする。

 うーん、ハミルトンが書いた他のエピソードも知りたいなあ。『バットマン』もかなり書いてたらしいんだけど。
 あと、アルフレッド・ベスターもアメコミのシナリオを書いてたそうだけど、どんな話だったか知りたいよね。
  
タグ :アメコミSF

Posted by 山本弘 at 09:50Comments(2)最近読んだ本

2014年10月06日

レノア・ブレッソン『世にも不思議な物語』(扶桑社ミステリー )



 こちらは編訳者の尾之上浩司氏から献本をいただきました。感謝いたします。

 1959年から61年までアメリカで放映されていた、超常現象を題材にしたアンソロジー番組『ONE STEP BEYOND』。日本でも日本テレビ系列で『ワンステップ・ビヨンド』『世にも不思議な物語』『これは実話?です』という題で放映されていた。フジテレビの人気番組『世にも奇妙な物語』のタイトルは、もちろんこれに由来している。
 去年、この番組の同人誌を作ったことがある関係で、僕はちょっと詳しい。日本でも、3シーズン計97本の中から60本をまとめた字幕版のDVDが発売されているが、字幕なしでも良ければ、YouTubeで『ONE STEP BEYOND』で検索すると、かなりの数のエピソードが視聴できる。違法アップロードではなく、権利を持っていたワールドビジョン社が、80年代後半、ほとんどのエピソードについて権利の更新をしなかったので、パブリック・ドメインになっているのだそうだ。
 幽霊の出てくる話も多いが、ホラー色の強い話は少なく、むしろ邦題通りの「不思議な物語」がメイン。雰囲気は同時期に放映されていた『ミステリーゾーン』(『トワイライトゾーン』)に近い。
 ただ、「実話の再現」というコンセプトが枷になっているせいか、全体的なストーリーの水準では『ミステリーゾーン』より明らかに落ちる。似たようなパターンの話が多かったり、オチが平凡だったり。もっとも、中にはきらりと光るエピソードも何本もあった。

 本書は番組の放映当時、1960~61年にアメリカで出版されたノヴェライズ。それが半世紀以上経って、ようやく日本に訳されたのである。 まさかそんなものが読めるとは思わなかったので嬉しかった。
 97本の玉石混淆のエピソードから、10本を厳選。同じような超常現象が並ばないように配慮されており、幽霊、自動書記、憑衣、テレパシー、予知夢など、様々なパターンの話が楽しめる。特に完成度の高い話や、オチの秀逸な話が選ばれており、ある意味、番組の最も面白い部分だけが凝縮されていると言える。
 たとえば「血まみれの手」は、愛する女を殺してしまったピアノ弾きが呪いにかかる話。いくら手を拭いても、触れたものに血がついてしまう。最後に、あるものに触れるのをためらうことで、自白に追いこまれるという構成には感心した。
「絆」は、平凡な男が突然、奇怪な症状に苦しめられる話。医者にも分からないその症状の原因とは……という謎解きが面白いはずなんだけど、DVD版ではよりにもよって、邦題で堂々とネタバレしてやがりまして(苦笑)。
 これだけではなく、日本版DVDの邦題は、オチを割ってしまっているものが多い。誰だよ、この邦題つけた奴。
 他にも、テレパシー能力を持ってしまった少女の話「魔女と呼ばないで」、サーカスの空中ぶらんこ芸人一家の親子愛を描く「空中ぶらんこ」などもいい。
 日本版DVDに入っていないのは、「呪われた花嫁」「再会」「サリーに出会ったときは」の3本。第二次世界大戦直前のドイツのグライダー・クラブの若者たちの話「再会」は、結末が衝撃的。実話とはとても思えないけど、面白ければいいよね。
 僕の一押しは「サリーに会ったときは」である。有名な都市伝説を題材にしてるんだけど、同人誌を作るためにYouTubeで視聴していて、まさかそう来るとは予想していなかったので、結末で仰天したものである。ありきたりの怪談でも、こんな風に脚色すれば面白くなるのかと感心した。いや、泣けるいい話ですよ。こういう話は、時代を超えて古びないね。
 というわけで、『ミステリーゾーン』系の不思議な話が好きな方におすすめ。
  

Posted by 山本弘 at 09:35Comments(1)最近読んだ本

2014年10月06日

辻真先『未来S高校航時部レポート TERA小屋探偵団』(講談社)

 ここ数ヶ月に読んだ本や同人誌、視聴したDVDの中から、特に面白いと思ったもの、印象に残ったものをいくつかまとめて紹介します。




>江戸の長屋で密室殺人事件が発生! 事件現場で住人たちが目撃したのは、天翔ける巨大な白猫だった……。不可解な事件は続き、現場の状況から町娘・お美濃が疑われてしまう。そこで、彼女の無実を信じる五人の少年少女が行動を開始! 圧倒的美少年・黎(れい)、おしゃれ歴女・真琴、おっちょこちょいな小坊主・越人(えつと)、クールな戦闘少女・凜音(りんね)、そして抜群の推理力を誇る学(がく)。個性豊かなこの五人、実は江戸の町人ではない。はるか遠い未来からタイムスリップで訪れた、未来S(ミクラス)高校航時部のメンバーなのだ! 江戸の町を騒がせた不可能犯罪の真相は、やがて彼ら自身の時代と、時間旅行の秘密に迫っていき――?

 7月、尊敬する辻先生から献本をいただき、SF大会に向かう途中の新幹線の中で読破。興奮冷めやらぬうちに、つくばのホテルで感想書きました。

 いやあ、参った。

 登場人物が、男装の美少女とか、男の娘とか、古武術に精通した戦闘美少女とか、色っぽい女教師とか、はたまた××××××(ネタバレになるので伏字)とか、どんだけ流行の要素ぶちこんでんねん! とツッコミたくなるほど、見事に現代風のライトノベル的キャラ配置。
 軽いノリで読みやすいが、江戸時代の考証はしっかりしていてリアリティがある。やはり辻先生の傑作『小説 佐武と市捕物控』を連想した 。
 冒頭、長屋で起きた密室殺人を、5人の少年少女が順番に推理してゆく。1人の推理を次の奴が欠点を指摘してくつがえし、またその推理を次の奴がくつがえし……と繰り返しながら真相に迫ってゆくのだ。このあたりはミステリ作家である辻先生の面目躍如。
 なるほど、これは江戸時代を舞台にしたミステリなのね……と納得しかけたら、この殺人事件は単なる発端にすぎなかった。
 ちょうど本のまん中あたりで来る大きなどんでん返し! ライトな雰囲気のタイムトラベルものかと思ったら、実はその裏にはすごくヘビーでダークな事情が。そして人類の歴史を揺るがす大陰謀が明らかに。
 クライマックスは武術と超能力と超テクノロジーとタイムパラドックスが入り乱れる一大バトル! 圧倒的な敵の力に追い詰められながらも、何とか敵のボスを倒したと思ったら、そいつがパワーアップして逆襲に転じ、さらなるピンチに……と、状況が二転三転。このバトルだけで普通のラノベ数冊分のアイデアが詰めこんであるよ!
 しかも最後の最後に登場するあのお方! そこまでやるか! ブレーキないのか!? と唖然となった。何この過剰なまでのサービス精神。

 いやあすごい。82歳になってもまだこんなものが書けるんだ、辻先生! ちっとも衰えてないよ。つーか、70年代の〈株式学園の伝説〉シリーズとかよりパワフルになってるよ!
 この若さ、見習わなくては。

 唯一の欠点はイラスト。ちょっと地味すぎる。もうちょっと上手い人に描いてほしかったなあ。


  

Posted by 山本弘 at 09:21Comments(1)最近読んだ本